インビザライン矯正中に歯ぎしり・食いしばり癖が及ぼす影響とは?

インビザライン矯正中に歯ぎしり・食いしばり癖が及ぼす影響とは?
歯ぎしりや食いしばりは非常に強い力がかかるため、歯やその周囲組織、そして顎関節にまで悪影響を及ぼすことがあるなど、程度によってはとても注意が必要になる場合があります。

もし歯ぎしりや食いしばりがある場合、インビザラインのマウスピースに影響があるのか、気になっている人もいることでしょう。

そこで今回は、インビザライン矯正中に歯ぎしりや食いしばり癖が及ぼす影響について見ていきたいと思います。

 

1.歯ぎしり・食いしばりの原因

 

歯ぎしり・食いしばりというのは、眠っている間や、集中している時やスポーツをしている時、力を入れる時などに歯を噛み合わせてぐっと力を入れる、もしくは歯をギリギリと擦り合わせる動作をいいます。

歯ぎしりや食いしばりが起こる原因として、次のようなことが考えられています。

 

1-1ストレス

歯ぎしりや食いしばりの多くは無意識に行われており、その場合に主要な原因と考えられているのは、ストレスです。人間は精神的なストレスを感じている状況下では体に緊張をもたらし、それが無意識に歯の食いしばりとなってストレスを開放していると言われています。

 

1-2歯並び・噛み合わせの悪さ

歯並びや噛み合わせが悪いことでも、歯ぎしりや食いしばりが起こることがあると言われています。

かみ合わせが不安定だと、噛む筋肉がアンバランスに働くことでストレスを感じ、そこから歯ぎしりや食いしばりが起こると考えられています。

 

1-3力を入れる手段として

スポーツをする際や力仕事をする場合、強い力を発揮するためには奥歯をぐっと噛みしめる必要があります。

 

1-4癖になってしまっている

ゲームや家事、勉強中など、何かに集中している時に無意識に食いしばりをしてしまうことが癖になっているケースもあります。

 

1-5飲酒・喫煙

アルコールを常用している人、タバコを吸う人は歯ぎしりが起こりやすいという調査結果があります。ですが、これはストレスを感じてアドレナリンの上がっている人が飲酒や喫煙をする傾向があるので、大元の原因はストレスであるとも言えます。

 

1-6性格・遺伝

性格や遺伝も歯ぎしりの起こりやすさに関係があるという報告もあります。

 

1-7薬の副作用

抗うつ剤の副作用といったものでも歯ぎしりが起こることも報告されています。

 

1-8子どもの場合にはかみ合わせの調整として

赤ちゃんや幼い子どもが歯ぎしりをすることがありますが、これには乳歯が生えてくる際や、乳歯から永久歯への歯の生え替わりに伴ってかみ合わせを調整する目的で起こると言われています。

 

2.インビザライン矯正中に歯ぎしり・食いしばりが及ぼす影響は?

2.インビザライン矯正中に歯ぎしり・食いしばりが及ぼす影響は?

歯ぎしりや食いしばりの程度によっては、インビザライン矯正をしている時にさまざまな悪影響が起こる可能性があります。

そのため、これまでに強い歯ぎしりや食いしばりの癖について指摘されたことのある方は、次に挙げるリスクを踏まえたうえで、ほんとうにインビザラインで治療を行うべきか、担当医とよく話し合う必要があります。

 

2-1マウスピースが変形・破損する可能性がある

インビザラインでは医療用プラスチックでできたマウスピースを装着することで矯正治療を進めていきます。

歯ぎしりや食いしばりによってかかる力は体重以上、人によっては体重の2倍以上の負荷がかかると言われています。このような強い力が継続してかかりつづけると、たとえ強度に優れたマウスピースであっても変形や破損する可能性があります。

治療の途中で変形や破損が起こってしまうと、お口の中が傷ついてしまうリスクがありますし、そのマウスピースを使い続けることはできなくなる可能性もありますので、その場合には作り直しが必要になってしまいます。
また、作り直しの費用もかかることになります。

 

2-2治療期間が延びる可能性がある

歯ぎしりや食いしばりがひどくてマウスピースが壊れてしまうと、作り直しが必要になる場合もあり、そうするとまたマウスピースを発注し、受け取るまでの期間が必要になってしまいますので、その分治療期間が延びてしまいます。

また、歯ぎしりや食いしばりの力が強すぎると、マウスピースによって本来歯にかかるべき力が十分に発揮されず、歯が予定通り移動しないことも起こり得ます。

そのため、歯ぎしりや食いしばりが強い方の場合には、治療計画どおりに治療が進んでいるか、通常よりも注意を払って経過観察をしていく必要があります。

 

2-3治療の結果に影響が出ることがある

歯ぎしりや食いしばりがあって異常な力がかかり続けると、最初に予定した歯並び、かみ合わせにならないことがあります。

インビザライン治療中にマウスピース装置からかかる力以外に歯ぎしりや食いしばりによって強い力がかかると、歯が計画した動き方をせず、治療が最初に想定したとおりに進まなくなる可能性が出てきます。

そうすると、治療計画の変更や治療期間の延長、そして違う矯正方法への変更を余儀なくされることもあります。

 

3.歯ぎしりや食いしばりの癖の対策や改善方法はあるの?

3.歯ぎしりや食いしばりの癖の対策や改善方法はあるの?

上でご紹介したように、歯ぎしりや食いしばりの程度が強い場合にはインビザライン治療にとってあまり良い影響を与えない可能性があります。

歯ぎしりや食いしばりはほとんどの場合無意識に行っているものですので、完全になくすということは難しいかもしれませんが、次のような対策をとることで少しでも軽減することは可能です。

 

3-1リラックスした状態で眠りにつく

歯ぎしりは日中のストレスを解消する目的で行われるとも言われています。眠る前にあれこれといろんなことを考えてストレスを感じてしまうと、それが歯ぎしりとなって現れるやすくなりますので、寝る前にはなるべく考え事をせず、リラックスした状態で眠りにつくようにしましょう。

 

3-2日中の食いしばりをしないように注意する

眠っている時の歯ぎしりはコントロールができませんが、起きている間の食いしばりは意識することである程度コントロールが可能です。

日中の食いしばりが多いと眠っている間の歯ぎしりが多くなることが分かっているので、日中はなるべく、食べている時以外には上下の歯をなるべく合わさないようにしてみましょう。

 

3-3高い枕を避ける

高い枕を使っている場合、上あごと下あごが密着しやすい状態になるため、歯ぎしりが起こりやすくなります。

低めの枕を使うことで上下のあごの間に余裕ができ、歯ぎしりも起こりにくくなります。

 

3-4飲酒や喫煙を控える

歯ぎしりを起こしやすくする飲酒や喫煙はなるべく控えるようにしてみましょう。

 

3-5寝る前に自己暗示をかけてみる

意識の力というのも効果的です。翌日早く起きなければならないと思っている場合、目覚ましがなくても起きられた経験のある人も多いことでしょう。

そのように、自分で「歯ぎしりをしない」と、寝る前に強く暗示をかけることで歯ぎしりが起こりにくくなる可能性があります。

 

4.まとめ

インビザラインのマウスピースは強い素材でできていますし、定期的に新しいものに交換するため、通常、多少の歯ぎしりや食いしばりは問題になりません。

ですが、重度の歯ぎしりや食いしばりをしている人の場合、破壊的な力によって治療がうまくいかなくなる場合も想定されます。

そのため、歯ぎしりや食いしばりの癖のある人は、インビザラインでの治療についてより慎重に検討し、担当医ともよく話し合って治療法を決めていくことが大切です。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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