子どもの口呼吸は歯列矯正で治せるの?原因と改善方法!
お子さんがよくポカンと口を開けている、ということはありませんか?もしそのような場合、お子さんは口呼吸をしているかもしれません。口呼吸をしていると、健康面や発育面、また精神的にも、将来的に弊害が出てくる可能性があります。
今回は、口呼吸について、その原因や悪影響、口呼吸を改善する方法について詳しく解説していきます。
1.口呼吸とは?またその原因は?
1-1口呼吸とは
口呼吸というのは、本来ならば鼻で行うべき呼吸を口で行っている状態をいいます。乳児の時には、母乳やミルクを飲む際に、皆鼻呼吸をしていますが、それが何らかの原因により、口呼吸になってしまう場合があります。
現在、口呼吸をしている子どもたちが増えていると言われており、なんと小学生の80%以上が口呼吸をしているとも言われています。
1-2口呼吸の原因
口呼吸の原因になっているものとして、次のようなものが挙げられます。
◆アレルギー疾患
花粉症やダニなどによるアレルギーを持つ人は年々増加傾向にあります。そのアレルギーによって慢性的な鼻詰まりが起こると、鼻で呼吸ができなくなり、口で呼吸せざるを得なくなります。近年では、花粉症を発症する年齢が低年齢化しており、その影響で口呼吸になっているケースも多いと考えられます。
◆アデノイド肥大
アデノイドとは、鼻からノドに移行する部分に位置するリンパ組織の一つで、一般的には2〜3歳頃から大きくなり、5〜6歳でピークの大きさとなって、その後は思春期になるとほぼ消失するとされています。ところが、これが病的に肥大してしまうことがあり、そこが鼻からの気道を塞ぐことにより、鼻呼吸がしづらくなってしまいます。
◆歯並び・骨格によるもの
歯並びや骨格が原因で口が閉められず、口呼吸になることもあります。
◆口周囲の筋力不足によるもの
いつも口を開けていることが癖になってしまっていると、口周りの筋肉が弱くなってしまい、口呼吸になりやすくなります。
2.口呼吸がもたらす悪影響
口で呼吸できるならば、別にいいのでは?と思われる人もいるかもしれませんが、鼻で呼吸をするのと、口で呼吸をするのとでは、とても大きな違いがあります。実際に、口呼吸が常態化することで、次のような悪影響が起こる可能性があります。
2-1虫歯、歯周病にかかりやすくなる
口で息をしていると、本来唾液で潤っているべき口の中が乾いてしまいます。唾液は、消化酵素としての役割のほかに、お口の中を洗い流す作用、殺菌作用、免疫作用、初期虫歯を修復する作用、お口の粘膜の保護作用など、多くの役割を果たしているため、唾液が減ってしまうと、虫歯や歯周病などのトラブルを起こしやすくなってしまいます。
2-2歯並び・顔の形が悪くなる
成長発育が盛んな子どもの時に口呼吸をしていると、骨格や歯並びが口呼吸しやすいように順応していってしまいます。その結果、上あごが前に出る形となり、出っ歯になるのに加え、下顎が引っ込んで二重アゴになる、「アデノイド様顔貌」と呼ばれる特有の顔つきになりやすくなります。
また、いつも口があいてポカンとした顔となり、唇の周囲の筋肉も緩み、締まりのない顔つきになります。
2-3歯が変色しやすくなる
口の中が乾き気味となりますので、ものを食べた後に唾液がうまく循環せず、着色しやすい飲み物、食べ物を摂取した後に唾液で洗い流されにくくなり、歯に着色を起こしやすくなります。
2-4口臭が強くなる
唾液が乾いてしまうと、細菌が口内で繁殖しやすくなり、強い口臭を起こしやすくなります。また、それに加えて、口呼吸の状態だと、舌の位置が本来あるべき上の前歯の裏側ではなく、下の前歯の裏側に位置してしまうので、舌の表面の付着物が溜まりやすくなり、そこからも匂いを放つようになります。さらには、歯周病を起こしやすくなるため、歯周病独特の匂いもそれに加わることがあります。
2-5風邪やアレルギーのリスクが高くなる
通常、鼻で呼吸する場合、鼻腔の中の繊毛と粘液というフィルターにより、外部から侵入してきたウイルスやホコリなどは濾過され、その後副鼻腔によって加湿されることで空気は湿度の高い状態で気管の方へ移動していきます。
ところが、口呼吸の場合、異物を取り除くフィルターはなく、異物を含む乾いた空気がノドに入っていってしまいます。
その結果、風邪などのウイルス感染や、アレルギーを起こしやすくなります。
2-6いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクを高める
口呼吸をしていると、呼吸がしやすいように舌の位置が下がり、喉の方に落ち込む形となります。そうすると、睡眠時に空気の通る道が狭くなり、いびき、もしくはひどい場合には睡眠時無呼吸症候群を起こしてしまうリスクがあります。
睡眠時無呼吸症候群になると、常に睡眠不足の状態となり、日中の眠気や集中力の低下を起こしやすくなるだけでなく、心肺機能にも負担がかってしまうので、将来的には高血圧や脳梗塞などのリスクも高めてしまいます。
2-7味覚障害、嗅覚障害のリスクが高くなる
口の中の唾液が乾くことにより、味覚細胞がうまく働きにくくなることに加え、舌苔が溜まりやすくなり、味を感じにくくなります。また、鼻を使わなくなるので、嗅覚が衰えやすくなると言われています。
3.口呼吸を改善する方法
口呼吸の原因によって改善方法は違ってきます。原因別に改善方法をご紹介します。
3-1鼻の詰まりが原因の場合
風邪やアレルギーなどによる鼻炎、蓄膿症、もしくはアデノイド肥大が原因で鼻が詰まっている場合、鼻詰まりに対する治療が必要です。これに関しては、歯科的な治療ではなく、耳鼻科的な治療、もしくは生活習慣の改善などが必要となってきますので、専門家に相談し、なるべく早めに根本的な解決をしていくようにしましょう。
3-2歯並びが原因の場合
出っ歯、上あごが出ていることで口が閉じられず、口呼吸になってしまっている場合、歯列矯正、成長期の時期によっては、上あごを広げる矯正装置をつけて、正常な骨格の成長を促すことで歯並びと骨格を改善していくことができます。
また、それに並行して、口周囲の筋肉や舌の筋力不足を改善する筋肉のトレーニング(MFT)も必要になってきます。こちらも矯正歯科の治療の一環として行われます。
3-3癖・口周囲の筋力不足の場合
鼻詰まりになったことなどがきっかけで口呼吸になってしまい、鼻の問題が解消しても、それが癖になってずっと口呼吸をしているケース、というのもあります。そのような場合には、口を閉じて鼻呼吸を意識させて行わせるだけで鼻呼吸に戻すことも可能です。
ですが口を開けていた期間が長く、口周りの筋肉が弱くなってしまい、口呼吸になってしまっている場合には、口周囲の筋力をつけるトレーニング(MFT)をすることも必要になってきますので、矯正歯科で相談してみましょう。
4.まとめ
お子さんが口呼吸をしているか鼻呼吸をしているかで、歯並びや骨格に大きな違いが出てくるだけでなく、歯や体の健康状態、学業や精神状態などにも影響が及んでくるため、口呼吸にきちんと対処するかどうかは、お子さんの人生をも左右してしまうことだと言えるでしょう。
特に、最近では、マスクを長期間つけていたことにより、より一層口呼吸をしている人が増えていると言われています。口呼吸はすぐに体に影響を与えるものなので、口呼吸をしているのに気がついたら、できるだけ早めに対処し、改善することが大事です。
ぜひ、お子さんの普段の様子をよく観察して、お口をぽかんと開けている、もしくは、鼻で息ができない様子が見られるならば、早めに医療機関に相談して対処していくようにしましょう。
この記事の監修者
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