歯並び・かみ合わせと全身疾患、健康寿命との関係は?

歯並び・かみ合わせと全身疾患、健康寿命との関係は?
歯並びが影響するのは見た目だけだと思っていませんか?
歯並びが悪い場合、見た目を気にして矯正治療を希望する人は多いですが、見た目が気にならない場合にはあまり矯正治療を考える人はいないでしょう。

ですが、歯並びやかみ合わせが悪い状態というのは見た目だけでなく全身の健康状態とも深く関わってくるものです。

歯並びやかみ合わせが悪い状態が放置されると、若いうちにはとくに不便やトラブルを感じなくても、歳をとるにつれていろいろな問題が起こってくる可能性があります。

今回は、

・歯並び・かみ合わせが全身疾患に関係してくる理由
・歯並び・かみ合わせの悪さが引き起こす全身疾患にはどのようなものがあるのか
・歯並びが良くなることで全身に与える良い影響
・歯並びと健康寿命の関係

について解説していきます。

 

1.歯並び・かみ合わせが全身疾患に関係してくる理由

 

歯並び・かみ合わせが悪いと次のようなことから全身の病気につながっていきます

 

1-1歯の健康が損なわれて全身の病気につながる

歯並びが悪いと、歯磨きの際に磨き残しが出やすく、そこから虫歯や歯周病にかかりやすくなり、最終的には歯の寿命を縮めやすくなります。

歯が悪くなると、そこから細菌やその産生物が血管や呼吸器を通じて全身に広がり、心臓病や脳梗塞、肺炎など様々な全身疾患を起こしやすくなることが分かっています。

また、歯を失い始めると特に、体幹バランスをうまく保てなくなり、転倒しやすくなって骨折のリスクにもつながります。

そして、うまく噛めなくなるので、脳に刺激が伝わりにくくなって認知症のリスクも高まります。

 

1-2胃腸の不調を招きやすい

歯並び・かみ合わせが悪いと、ものをしっかりと噛み砕くことができないので、胃腸へ負担がかかってしまいます。

結果的に栄養の吸収がうまく行われなくなり、体の虚弱や不調につながるほか、よく噛まないことで早食いになり、肥満、糖尿病のリスクも高まります

 

1-3睡眠時無呼吸症を起こすことがある

歯並びが悪くて口の中が狭くなると、舌は喉の方に落ち込んでしまいます。
睡眠中にあおむけになると舌はさらに喉の方に落ち込み、気道が狭くなっていびきや睡眠時無呼吸症を起こしやすくなります。

睡眠時無呼吸症は日中の眠気や集中力低下を起こすことがあるほか、酸素の取り込みが低下するので、脳の発達にも影響するとも言われています。
そして、放置することで高血圧や心臓病のリスクを引き起こす原因にもなります。

 

2.歯並び・かみ合わせが良くなると全身の健康に良い影響がある!?

2.歯並び・かみ合わせが良くなると全身の健康に良い影響がある!?

矯正治療で歯並びが改善すると、歯を清潔に保ちやすくなることでお口のトラブルが起こりにくくなるだけでなく、全身の健康にも次のような良い影響を及ぼします。

 

2-1顎関節症のリスクを減らせる

かみ合わせが悪いと顎関節の不調をきたす「顎関節症」のリスクが高くなります
顎関節症になると、口の開け閉め時の顎関節の雑音、顎周辺の痛み、口が大きく開けられない、といった不快症状が現れます。

また、それに付随して頭痛や肩こり、首の痛み、耳鳴り、めまいといった症状が起こることもあります。
矯正治療をして歯の位置を改善することで、このような症状の改善が期待できます。

 

2-2肥満や糖尿病の予防にもつながる

歯並び・かみ合わせが良くなると、しっかりと噛めるようになり、唾液も良く分泌されるので、消化吸収が良くなって栄養が取りこみやすくなるとともに、胃腸のトラブルも起こりにくくなっていきます。

また、良く噛むようになることで食べすぎることがなくなり、肥満や糖尿病の予防にもつながっていきます。

 

2-3命に関わる全身疾患の予防につながる

歯並びが良くなることで歯の健康を保ちやすくなりますので、歯周病菌をはじめとする口内細菌が全身にまわって悪影響を及ぼすということがなくなっていきます。

これにより、心臓病(心筋梗塞、狭心症、心内膜炎)、脳梗塞、糖尿病、細菌性肺炎、慢性関節リウマチ、早産・低体重児出産、胃潰瘍、アルツハイマー型認知症といった病気を予防できる可能性があります。

 

2-4睡眠時無呼吸症のリスクを減らせる

悪い歯並びによって起こりやすくなる睡眠時無呼吸症も、歯並びを整えることで舌の位置が改善し、リスクを減らせる可能性があります。

その結果、突然の眠気による事故、高血圧、心臓病、不整脈、脳血管障害、糖尿病、突然死といった関連疾患の予防にもつながります。

 

2-5オーラルフレイルの予防につながる

歯並びや噛み合わせが悪い状態だと、噛む筋肉をはじめとする口周囲の筋肉を正しく使えなくなります。

結果として、将来的に口周囲の筋肉の虚弱(オーラルフレイル)を招き、それが体の虚弱へとつながり、最終的には寝たきりのリスクを高めることになります。

できるだけ早い段階で矯正治療をして歯並びを整えておくことにより、体の虚弱を防いで若々しい体を保つことにもつながります。

 

2-6体の様々な不快症状が改善する

かみ合わせが悪いと、噛むためにあごが無理な動きをするようになります。
また、筋肉のバランスが乱れて体幹バランスも悪くなってしまいます。

このようなことを続けていると首や肩の周りの神経や血管が圧迫されて痛みやしびれ、そして、めまい、耳鳴りといった不定愁訴が起こりやすくなります。

現在原因不明の不調がある方も、矯正治療で歯並びを整えることでこういった症状が改善してくる可能性もあります。

 

2-7精神面での効果

矯正治療をすると歯並びが美しく整うだけでなく、顎の位置も本来あるべき位置へと誘導されます。また、しっかり噛めるようになることでお口周囲の筋肉が使われるようになり、お顔も引き締まってきます。

その結果、自分に自信が持てるようになるのに加え、体の不調も起こりにくくなるので、心が乱されることが少なくなり、毎日をいい気分で過ごしやすくなります。

 

3.歯並び・かみ合わせが良くなると健康寿命が延びる?

3.歯並び・かみ合わせが良くなると健康寿命が延びる?

健康寿命とは介護や病気などによって他人の助けを借りることなく、自立して生活できる年数のことを言います。
イキイキとした人生をおくる上で本当に大事なのは、何歳まで生きられるか?ではなく、この健康寿命だと言えるでしょう。

歯並び・かみ合わせを矯正して改善しておくと、次のような理由で健康寿命も伸ばせる可能性があります。

 

3-1体を健康に保ちやすくなる

上でも述べたように、歯並びが整うことで歯の健康状態が良くなり、結果的に全身疾患のリスクを減らせる可能性が高くなります。
その結果、歳をとってもハツラツとした人生を送れる可能性が高くなります。

 

3-2転倒しにくくなる

かみ合わせが整っている状態だと体幹が整いやすく、転倒しにくくなりますので、骨折して寝たきりになる、といったことを回避しやすくなります。

 

3-3認知症にかかりにくくなる

歯並び・かみ合わせが整っていると歯を失いにくくなりますので、しっかりと噛める状態を維持でき、噛む刺激で脳が活性化しますので認知症にかかるリスクも下げることができます。

 

4.まとめ

 

歯並びを整えることは単に見た目だけの改善でない、ということをお分かりいただけたかと思います。矯正治療は見た目を良くする治療だという認識を持っている人は多いですが、矯正治療の本来の目的は、身体を健康にしていく治療であり、見た目の改善はメリットの一部でしかありません。

実際、一見歯並びの見た目は悪くなくても、かみ合わせに問題がある人や、見えない部分の歯並びが悪いという人も少なくありません。

こういった方は特にこれまで矯正治療の必要性を感じたことはないかもしれませんが、年齢を重ねるにつれて歯並びに問題のある部分は歯のトラブルが起こりやすくなり、全身の健康にも影響を及ぼす可能性もあります。

そのため、できれば健康な人生を送りたい、という方は矯正治療を検討してみることをおすすめします。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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