歯並びが悪いと舌癌になることがある?

歯並びが悪いと舌癌になることがある?
舌癌は、胃がんや大腸がんなどに比べて頻度は少ないものですが、口の中にできる癌の中ではもっとも発生率が高いものです。

舌癌を引き起こしやすくする要因にはいくつかありますが、実は歯並びの悪さもリスクを高めることがあります。

今回は

・舌癌とは、またその症状とはどのようなものか
・舌癌の原因やリスク因子とは
・舌癌の原因に歯並びの悪さは関係があるのか?
・舌癌を予防するにはどうしたらいいか?

ということについて一つ一つ解説していきます。

 

1.舌癌とは、その症状

 

1-1口腔がんの6割を占める癌

舌癌とはその名の通り舌にできる癌のことで、正確に言うと舌の前2/3にできる癌のことを言います。

口の中にできる癌は口腔がんと呼ばれますが、舌癌はそのうちの約60%を占め、女性よりも男性の発症率が高い傾向があり、若い人に起こることもあります。

国立がん研究センターによると、2019年に日本で舌癌と診断されたのは5769人というデータが出ており、日本だけでなく、世界的にも罹患者や死亡者が増えているとされています。

 

1-2好発部位·症状

舌癌の好発部位は舌の縁や裏側で、舌の先端や表面に発生することは稀です。
癌は舌の表面の細胞から生じ、進行するにつれて深部へと広がっていきます。

初期段階では自覚症状があまりなく、見た目に白色または赤色の変化が確認できるだけのこともあります。進行するにつれて口内炎のような潰瘍が現れますが、口内炎とは違って痛みをそれほど感じないのが特徴です。

また、硬いしこりや舌の動かしにくさ、しびれといった症状も現れます
癌が進行すると痛みや出血が続いたり口臭が強くなったりといったことも起こってきます。

 

1-3リンパ節や肺に転移しやすい

舌がんを含む口腔がんは、リンパ節や肺などに転移しやすいため、早期発見と早期治療が重要になってきます。

舌がんの5年相対生存率(病気の診断から5年後に生存している人の割合)は早期癌の場合で約90%、進行した癌の場合で約50%となっています。

 

2.舌癌の原因、リスク因子は?

2.舌癌の原因、リスク因子は?

現在のところ、他の癌と同様、舌癌のはっきりとした原因は分かっておらず、複数の因子が重なり合って発症につながると考えられています。

ですが、リスクを高める因子についてはある程度分かってきていますので、その中でも関連性が高いものについてご紹介します。

 

2-1口内の不衛生

お口のケア不足で口内細菌環境が悪い状態を放置していると、舌癌を発症しやすくなります。また、歯磨きなどのケアをきちんと行っていたとしても、口内が乾燥している状態では自浄作用がきちんと働かず、細菌環境が悪くなりやすいため注意が必要です。

 

2-2タバコ·アルコール

タバコは口腔癌を引き起こす最大のリスク因子と言われています。
喫煙をしているとタバコの煙に含まれる発癌物質がそのたびに口内を通過するので、癌の発症リスクを大きく高めます

ちなみに噛みタバコを愛用する人の多いインドは舌癌を発症する人が多いことで知られています。

アルコールはタバコに次いで癌を発症させやすくするリスク因子です。
アルコールを頻繁に摂取している場合、舌への刺激が慢性的に続いてしまいますので、その分リスクが高まります。

 

2-3刺激物(香辛料など)

辛いものを食べることの多い人は舌に強い刺激が加わることが多くなるため、舌癌を発症しやすくなると言われています。
また、酸味の強いものや過度の塩分もリスクを高める可能性があります。

 

2-4慢性的な刺激·炎症

舌に慢性的な刺激が加わり、炎症が繰り返し起こることでも癌のリスクが高まると言われています。

たとえば次のようなことは発癌リスクを高める可能性があります。

・尖った歯
・むし歯
・内側に傾いて舌を刺激している歯
・合わない被せ物や入れ歯が舌を刺激している
・熱いものでよく口の中をやけどしている

 

3.舌癌の原因に歯並びの悪さは関係があるのか?

 

歯並びが悪いからと言って必ずしも舌癌のリスクを高めるわけではありませんが、歯が舌を刺激し続けるような歯並びである場合、舌癌を引き起こしやすくなる可能性があります。

たとえば、次のような歯並びは舌癌のリスクを高める可能性があります。

 

3-1下の歯で内側から生えている、または傾いている歯がある

下の歯で歯並びから外れて内側に生えている歯や、内側に向かって倒れている歯がある場合、舌を慢性的に刺激し続けてしまうため、その部分から舌癌を発症するリスクは高くなります。

 

3-2かみ合わせが悪い

かみ合わせが悪く、舌を噛みやすいような状態になっている場合、それが慢性的な刺激となってがんの発症リスクにつながることがあります。

 

3-3歯並びが狭い

歯並びはU字型になるのが本来の姿ですが、子どもの頃の口呼吸などが原因で歯並びが狭くV字型になることがあります。

すると、舌が歯に当たりやすくなってしまい、結果的に慢性的な刺激が加わることにつながります。

 

3-4舌に歯の圧痕がついている

舌を出してみて、舌の縁に歯の圧痕がついてギザギザになっている場合、それは舌が歯に強く触れているということを表しています。

舌に圧痕がつく場合、舌のむくみや歯ぎしり、低位舌(舌の位置が通常よりも下にある場合)が原因となっています。

歯ぎしりはストレスが大きな原因とされていますが、歯並びが悪いことでも起こることがあります。また、低位舌も歯並びが悪いことによって起こりやすくなります。

 

4.舌癌を予防するためにできること

4.舌癌を予防するためにできること

4-1口内を清潔に保つ

口内細菌を良い状態に保つために、毎日の歯磨きを丁寧に行いましょう。
また、むし歯や歯周病などの病気を放置していると口内環境も悪くなるため、悪いところは放置せず治療しておくようにしましょう。

口内が乾燥しがちな方は、鼻呼吸を意識して口を開けたままにしない、水分をこまめに摂取する、といったことをこころがけるようにしましょう。

 

4-2刺激物の摂取に気を付ける

とくに辛いものが好きな方は摂り過ぎに気を付けましょう。酸っぱいものやしょっぱいものにも同様に気を付けましょう。

また、飲酒や喫煙もほどほどにし、口内をやけどしないよう、熱いものの摂取にも気を付けましょう。

 

4-3舌を刺激する原因を放置しない

舌に当たる尖った歯、合わない被せ物や入れ歯などがある場合には放置せず、きちんと治療を受けるようにしましょう。

歯並びが原因の場合には矯正治療を受けることで異常な刺激を解決できますので、できれば矯正治療を受けるのがおすすめです。

 

4-4歯科の定期検診を受ける

歯科の定期検診では粘膜部分も含め、お口全体の状態もチェックします。
もし舌に異変があれば、定期検診を受けることで早期発見が可能になるので、体の健康を守る上でもぜひ受けておくようにしましょう。

 

5.まとめ

お口の中は他の臓器と違って肉眼で直接見ることができるため、異変を自分でも発見しやく、早期発見・早期治療につなげやすい部分だと言えます。

とくに舌は外に出して自分でもチェックしやすい部分ですので、時々自分でおかしなところがないかチェックしてみましょう。

歯並びの悪さは見た目だけでなく、むし歯や歯周病のリスク上昇、そして今回ご紹介したように、舌癌を含めた口腔癌のリスクを高めることも分かっています。

矯正治療を希望される方の多くは見た目を気にして、ということが多いですが、見た目が気にならなくても、歯並びの悪さはさまざまな悪影響をもたらす原因となります。

そのため、歯並びに問題のある方は、今後より健康な人生を送っていくためにも矯正治療を検討してみることをおすすめします。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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