インビザライン矯正で顎関節症は改善されるの?
顎関節症は人生のうちで2人に1人が経験するとも言われているありふれた病気で、
一時的なもので自然におさまる場合もあれば、原因が解消されないことで慢性的に症状が続く場合もあります。
顎関節症は、程度が軽いうちだとそれほど気になることはありませんが、悪化すると日常生活にも支障が現れるほどつらい症状になることもあります。
実は顎関節症の原因によってはインビザライン矯正で顎関節症が改善する可能性があります。
くわしく見ていきましょう。
1.顎関節症の原因
顎関節症を起こす原因としては次のようなものが挙げられます。
また、原因は一つだけでなく、複数の原因が重なって起こることも多くあります。
1-1ストレス・緊張
顎関節症に大きな影響を与えるものとしてストレスが挙げられます。
ストレスや緊張が過剰になると、人はそれを無意識に解消しようとして歯ぎしりや食いしばりをしてしまい、それがあごに負担をかけることで顎関節症を発症することがあります。
1-2顎関節に負担をかける癖など
顎関節症に強い力をかけるような癖、たとえば、上で挙げたような歯ぎしりや食いしばりのほかにも、頬杖、うつぶせ寝、爪を噛む癖などの癖が日常的にある場合、あごの関節と噛む筋肉にダメージが加わることになってしまい、顎関節症を発症しやすくなります。
1-3歯並び・かみ合わせの悪さ
歯並びやかみ合わせが悪いと、筋肉のアンバランス、過度の筋肉の緊張が起こる原因になります。また、顎関節にもダメージを与えることがあり、結果的に顎関節症を起こしやすくなります。
こういったことは、むし歯の放置、歯が抜けたままになっている、合わない入れ歯のせいできちんと噛めない状態が続く、といったことでも起こることがあります。
1-4外傷によるダメージ
事故などの外傷によって直接的顎関節や靭帯、筋肉がダメージを受けた場合にも、
顎関節症を発症することがあります。
1-5 TCH(歯列接触癖)
TCH(Tooth Contact Habitの略語)は日本語では歯列接触癖(しれつせっしょくへき)と呼ばれているもので、普段何気ない時に上下の歯列を接触させてしまう癖のことです。
本来人間は、安静時には上下の歯の間に1~3ミリの隙間が空いているのが正常な姿で、食事の時以外には接触させないのが理想です。
ですが、何かに集中している時(料理、ゲーム、勉強、スマホ、パソコン)などに上下の歯を合わせるTCHのある人は、顎に負担が蓄積され、あごの症状を起こしやすくなります。
1-6元々の素因によるもの
顎関節や筋肉が元々弱い方は、より顎関節症になりやすい傾向があります。
2.インビザライン矯正で顎関節症は改善されるの?
インビザライン矯正の目的はあくまでも歯並びやかみ合わせを整えることです。そのため、顎関節症の改善を目的にインビザライン矯正をおこなうことはありませんが、インビザライン矯正をやった結果、顎関節症が改善するケースもあります。
そもそも顎関節症は、特に一時的に起こっている場合には自然に治るケースもあるのですが、「かみ合わせが悪い」といった原因が残っている場合には、ずっと顎関節症の症状が続く場合が多いです。
顎関節症の治療方法として歯科で主に行われているのは、「スプリント療法」と呼ばれるマウスピースを夜間に装着して顎を安静にする、といった方法です。
しかし、この方法はあくまでも症状を和らげるための対症療法で、日中に食いしばる癖やTCHがあると改善しにくいことがありますし、根本的に治せる方法ではありません。
インビザライン矯正をすると、歯並びとかみ合わせが改善するので、それが原因となって起こっている顎関節症の場合には、結果的に顎関節症が改善する可能性があります。
3.インビザライン矯正で顎関節症が治らないケースとは?
次のような場合にはインビザライン矯正で顎関節症を治すことは難しいでしょう。
3-1歯並びやかみ合わせが原因ではないケース
顎関節症を引き起こす原因は様々ですが、歯並びやかみ合わせが原因になっていないケースの場合には、インビザライン矯正をしたからと言って顎関節症の改善は期待できないでしょう。
3-2歯ぎしり・食いしばりが重度のケース
歯ぎしりや食いしばりの程度が重度の場合には、インビザライン矯正で歯並びやかみ合わせが整ったとしても、症状の改善は難しいでしょう。
3-3顎関節症が重度のケース
顎関節症が重度の場合、例えば、口が開きづらいといった症状が出ているケースの場合には、顎関節の構造自体に変形などが起こっている可能性があります。
こういった場合にはインビザライン矯正で歯並びを整えたとしても、症状の改善はあまり期待できません。
3-4あごに負担をかける癖を改善できない場合
たとえインビザライン矯正をして歯並びの問題が改善したとしても、頬杖をつく、TCHがある、というようなあごに負担をかける癖が続くならば、顎関節症の症状の改善は難しいでしょう。
4.インビザライン矯正で顎関節症が悪化することもある?
インビザライン矯正中には歯が動きますので、それに伴いかみ合わせが変わっていきます。その結果、その状態でものを噛もうと無理してあごを動かすこともあり、あごに無理な力がかかって痛みを感じることはよくあります。もともと顎関節症のあった人はもちろん、それまで顎関節症のなかった人も、歯が動いていく段階ではあごの痛みを感じることがあるでしょう。
特に、次のようなタイミングではあごの症状を感じやすくなると言えます。
4-1インビザライン矯正を開始したばかりの頃
インビザライン矯正のマウスピースを装着すると同時に歯が動き始めます。歯が動く段階ではかみ合わせも徐々に変わっていくので、歯の痛みとあごの痛みを感じることはよくあります。
4-2マウスピースを交換したばかりの頃
マウスピースを次の段階のものに交換したばかりの頃にも、やはり歯が動き出すのでその都度あごの痛みも感じやすくなるでしょう。
4-3ストレスで歯ぎしりや食いしばりをしてしまう時
矯正治療中というのはどうしても、装置のストレスや歯が動く際の痛み、かみ合わせが変わっていくといったストレスを感じます。
インビザライン矯正の場合はワイヤー矯正と比べてこういったストレスはかなり少ないのですが、やはり歯が動く際の変化による痛みや違和感というのは多少なりともストレスとして感じてしまいます。
結果的に、無意識的にそのストレスを歯ぎしりや食いしばりといった形で解消しようとすることがあるため、その際にはやはりあごの痛みなどの症状は出やすくなります。
5.まとめ
顎関節症の症状がある人は、それがもしも歯並びやかみ合わせの問題からきているようであれば、インビザラインで矯正をすることで顎関節症が改善する可能性があります。
ただし、歯並びやかみ合わせが悪くても顎関節症にならない人もいますし、やはりそういったことから考えても、顎関節症は一つだけの原因ではなく、複合的な原因が関わっている可能性が高いと言えるでしょう。
いずれにしても、歯並びやかみ合わせが悪い状態というのは歯だけでなく体の健康リスクを招くものでもあるので、矯正治療自体を受けることはおすすめです。
その結果顎関節症が治らない場合には、歯ぎしりやストレスなど、他の原因も関係しているということですので、一つ一つ対処していくとよいでしょう。
この記事の監修者
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