インビザライン(マウスピース矯正)は抜歯が必要・不要どっち?
インビザライン治療では、抜歯が必要になるケース、必要になるケースの両方のパターンがあります。
今回は、インビザラインで抜歯が必要になるケース、不要なケース、また、抜歯をする場合のメリットやデメリットとはどのようなものか、ご紹介していきます。
1.インビザライン矯正で抜歯が必要になるケース・症例
インビザラインで抜歯が必要になるかどうかは、それぞれの症例によっても異なりますが、主に次のようなケースではインビザライン矯正で抜歯が必要になります。
1-1重度の叢生(乱ぐい歯)
顎の大きさに対して歯が大きく、歯が並びきれずに重なり合っているような状態です。八重歯もこれに相当します。
軽度の叢生の場合、歯並びを横方向に広げたりすることでスペースが確保でき、抜歯をせずに並べることも可能ですが、重なりが大きい場合にはそれでは十分なスペースを作ることができないので、抜歯をして歯を並べる場所を作り出します。
通常は、前から4番目(第一小臼歯)、もしくは5番目(第二小臼歯)のいずれかを抜歯します。
1-2出っ歯(上顎前突)
前歯が前方に突出している場合、抜歯をせずに矯正しようとすると、前歯の出っ張りが改善しません。そのため、第一小臼歯か第二小臼歯を抜歯して矯正治療を行う必要があります。
1-3口ゴボ(上下顎前突)
口ゴボというのは、上下の歯がともに前方に出ていて、口元全体がゴボッと前方に張り出している歯並びのことを言います。この場合にも出っ歯と同様、歯並びを後方に引っ込める必要性があるため、スペース確保のために第一小臼歯か第二小臼歯を抜歯して矯正治療を行います。
1-4親知らずが問題を起こしそうな場合
矯正治療を行うにあたって、親知らず抜歯を勧められることが多くあります。それはなぜかというと、親知らずが生えてくる際に手前の歯を押す力が加わり、歯並びを乱してしまうことがあるからです。
抜くタイミングは、年齢など、その方の置かれている状況によっても異なりますが、親知らずが生える前に矯正治療が終わった場合には、歯根が未完成の段階で歯茎を切開して早めに抜くこともありますし、すでに生えている場合には、歯並びに問題が起こりそうな場合にのみ抜歯をすることもあります。
1-5状態のよくない歯がある場合
虫歯や歯周病で状態の悪い歯がある、歯根に大きな嚢胞がある、歯が歯並びから外れているなど、変な位置から生えている、といったような、状態のよくない歯がある場合には、インビザラインを始める前にその歯を抜歯する必要性が出てきます。
2.インビザライン矯正で抜歯が不要なケース・症例
インビザライン矯正で抜歯が不要なケース・症例というのは、不正咬合の程度が比較的軽めの場合です。このような場合には、少量のスペースを確保できれば、歯をわざわざ抜く必要もありません。
2-1歯並びを横方向に広げられる場合
叢生や出っ歯など、歯並びが悪い場合、その原因が歯並びの横幅が狭くなっていることで並びきれない、ということが多くあります。
この場合、側方拡大という方法で歯並びを広げることによって歯が並ぶスペースを確保できるならば、抜歯をする必要はありません。
ただし、ただ広げれば良いというものではなく、過剰に広げてしまうと噛み合わせが悪くなったり、歯の表側の骨や歯茎が薄くなって歯茎が下がりやすくなったり、ということが起こる場合もあるため、注意が必要です。
2-2「IPR」が可能な場合
IPRとは歯の横幅をヤスリで少量削ることによってスペースを生み出す処置のことです。スペースを少しだけ確保したい場合には、この方法で抜歯を避けることが可能です。
削る量は1箇所につき0.1~0.25mm程度と、ほんの少しですが、隣り合う歯も削れば、合計してより多くの幅を確保することができます。
削るとしみたり虫歯ができたりしやすくなるのでは?と心配されるかもしれませんが、歯のエナメル質の範囲内で行いますので、そのような心配はありません。
2-3奥歯を後ろに移動させることが可能な場合
奥歯を後方に移動させることが可能な場合には、それによってスペースが作れるので、抜歯をする必要はありません。インビザラインでは、後方に移動をすることが可能なので、奥歯の後ろ側の骨がしっかりと残っていて、親知らずがない場合には検討の余地があるでしょう。
3.インビザライン矯正で抜歯を行う場合のメリット
抜歯をする場合、スペース不足が一気に解消できるので、次のようなメリットがあります。
3-1重度の症例でもきれいな仕上がりになる
どんなに重度のデコボコに重なった歯並びでも、前方の張り出しが強いケースでも、抜歯をすることにより歯を並べたり、引っ込めたりするためのスペースが十分にできますので、歯並びも、横顔も、きれいな仕上がりにすることができ、コンプレックスもより確実に解消できます。
3-2治療がスムーズに進む
スペース確保が簡単にできるので、治療がスムーズに進み、抜歯をしない場合よりも早く治療を終わらせることも可能です。
3-3後になって歯並びが乱れるリスクを減らせる
親知らずを抜いておくことで、後になって親知らずが歯列を押して歯並びが乱れる、というリスクを減らすことができます。
3-4歯を削ったり、歯茎が下がったりするのを防げる
歯を抜いて十分にスペースを確保できるので、健康な歯を削ってスペースを作る必要はありませんし、側方拡大をやって歯並びを広げた結果、歯の表側の骨や歯茎が薄くなり、歯茎が下がりやすくなる、ということを避けることができます。
4.インビザライン矯正で抜歯を行う場合のデメリット
抜歯をする場合、次のようなデメリットがあります。
4-1歯の本数が減る
矯正治療で歯を抜く場合、特に小臼歯の場合には、本来あるべき健康な歯を複数本抜かなければならないというデメリットがあります。
4-2抜歯後の隙間が一時的に気になる
小臼歯を抜く場合、一時的に隙間が空きますが、見えやすい場所にあるため、歯の隙間がなくなるまでの期間は見た目が気になる、ということも出てきます。
4-3治療期間がかかる
抜歯をして矯正治療をする場合、十分な隙間が確保できますが、その分歯を動かさなければなりません。インビザラインはワイヤー矯正に比べて、どちらかというと歯の平行移動は得意としていないため、治療期間が長くかかってしまう可能性があります。
5.まとめ
以上、インビザライン治療で抜歯が必要なケース、必要ないケース、また、抜歯した場合のメリットやデメリットをご紹介しました。
誰もが、できれば抜歯をしないで矯正したい、と思うものです。健康な歯を抜歯するのは誰でも躊躇してしまうものですが、矯正治療を満足のいく結果に終わらせるためには、場合によっては抜歯をしたほうがいいことがあります。
ご自分の場合にどちらの方法がベストなのかを知るためには、よく矯正歯科医と相談して、ご自分の場合におけるメリット・デメリットをよく理解し、ご自分にとってどのようなゴールを目指しているのかも考慮して判断することが大事です。
なお、症例によってはインビザラインが適応症とならず、ワイヤー矯正のみでしか対応できないケースもありますので、インビザライン治療に興味のある方は、まずは矯正治療医に相談してみることをおすすめします。
この記事の監修者
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