子どもの歯並びを自力で良くするトレーニング方法はあるの?
生え替わりの途中である成長期の段階なら、日々、お口周りの筋肉を正しく使うことで歯並びを良い方向に導き、顔の形をできるだけ良くしていくことも可能です。
今回は、お子さんの歯並びやお顔の骨格の状態が悪くなってしまう原因、そして、歯並びや骨格を自力でよくするためのコツやトレーニング方法についてご紹介していきます。
1.子どもの歯並びが悪くなる原因
子どもの歯並びが悪くなる原因として、次のようなものが挙げられます。
1-1口周囲の癖、習慣
口周囲の筋肉の使い方によって、歯並びや骨格というのはどのように形成されるかが決まってきます。例えば、次のような癖や習慣がある場合には要注意です。
- やわらかいものばかり食べてよく噛まない食生活をしている
- 口呼吸をしていていつもぽかんと口を開けている
- 片側ばかりで噛んでいる
- 指しゃぶりをしている
- 唇や爪を噛む癖がある
- 頬杖をついている
- うつ伏せ寝で寝ている
- 歯を舌で押す癖がある
このような癖があると、口周囲の筋肉が正常に発達せずに歯並びが乱れたり、骨格の変形を起こしたりする原因となります。
また、椅子に座って食べている場合、足が宙に浮いてぶらぶらしていると、顎の成長がうまく行われにくいと言われています。さらには、テレビを見ながら顔を横向きにして食べるのも、片側ばかりで噛むようになりやすく、顎の変形を招いてしまうリスクがあります。
1-2遺伝が関係している場合
◆下顎前突(受け口)、上顎前突(出っ歯)
骨格的に大きく前に出ている受け口や出っ歯というのは、遺伝的な要素が大きく、両親のどちらかがそのような骨格の場合、子どもにも受け継がれる可能性が高くなります。
◆小帯異常や過剰歯、癒合歯、先天性欠損歯
小帯というのは、鼻の下の上唇と歯茎をつなぐ部分や舌の下に走るスジで、この長さや太さによっては、歯並びや骨格に影響を与えることがあります。
また、歯が通常よりも多い「過剰歯」、乳歯の段階で前歯2本がくっついている「癒合歯」、先天的に永久歯が備わっていない「先天性欠如歯」などがある場合にも、歯並びに影響を及ぼします。
1-3乳歯の虫歯
乳歯の虫歯がひどくなり、早期に抜歯となった場合、歯を失った両側の歯が隙間を埋めるように寄って来てしまい、その後に生えてくるはずの永久歯のスペースがなくなってしまいます。そうすると、永久歯は歯並びから外れた変な位置から生えてきてしまい、歯並びがガタガタになる原因となります。
2.癖によって作られる不正咬合、兆候や症状
子どもの時期に口周囲の癖が続くことによって、次のような不正咬合(悪い歯並び)、兆候や症状を起こすことがあります。癖が長引けば長引くほど、骨格の形成にも影響が及び、治すのが難しくなるため、以下のような癖がお子さんにある場合、早めにやめさせることが大事です。
2-1指しゃぶり
指しゃぶりをいつまでも続けていると、出っ歯や開咬(かいこう:奥歯で噛んでも前歯がポッカリと開いている状態)といった歯並びになる可能性が高くなります。
2-2下唇を噛む癖
下唇を噛む癖があると、上の前歯は外側に押されて出っ歯に、そして下の歯は口の内部に押されて内側に倒れることにより、歯並びのスペースが狭くなり、歯並びがガタガタに乱れる可能性があります。
2-3上下の唇を歯の内側に巻き込んで舐める癖
上下の唇を歯の内側に吸い込んで舐める癖は、下顎を前に出す形となるので、受け口になるリスクがあります。
2-4舌を歯に押し付ける、もしくは突き出す癖
舌を前に突き出したり、舌を歯に押しつけたりする癖が続くと、出っ歯や開咬、すきっ歯の原因になります。
2-5口呼吸
本来は鼻で呼吸すべきところを口で呼吸していると、口で呼吸がしやすいように、歯並びや骨格までもが変わっていきます。その結果、出っ歯で下顎が引っ込んだ特有の「アデノイド様顔貌」と呼ばれる顔つきになっていくリスクがあります。
2-6頬づえ・うつ伏せ寝
いつも頬づえをついていたり、うつ伏せ寝をしていたりすると、顎が押されている側に変形していく恐れがあります。
3.正しい舌の位置・呼吸方法・姿勢を保つことが大事
普段何気なく過ごしている時、舌の位置はどこにありますか?実は舌の位置というのは、普段の健康状態に大きく関係してきます。また、成長期の子供たちにとっては歯並びや顎の発達に直接的に影響を与えますので、正しい位置に舌の位置を置くということは非常に重要なポイントとなります。
3-1正しい舌の位置はどこ?
安静時の正しい舌の位置とは、上顎の前歯の付け根部分(裏側)で、舌全体は上顎の天井部分(口蓋)にくっついている状態です。この位置は「スポット」と呼ばれ、この位置に舌があることがまずは基本、かつ重要になってきます。舌が上顎にくっついている状態だと、自然と鼻呼吸となります。そして、気道も広がりますので、空気もよく取り込めるようになります。
また、鼻には鼻毛や粘液など、フィルターの役目をするものがありますので、空気中のホコリやウイルスなどを取り除き、そして気道に入る前に空気に適度な湿気を与えてくれます。
3-2舌の位置が悪いとどんなことが起こる?
舌の位置がスポットの位置になく、下顎の歯の裏側にあるということはありませんか?もしその場合、「低位舌」の状態にあるということになります。
低位舌の状態になると、鼻呼吸ではなく口呼吸になりやすく、口が乾燥気味になって虫歯や歯周病、口臭を起こしやすくなったり、ウイルス感染症やアレルギーのリスクが上がったり、口周りの筋肉が緩み、舌が上顎を横方向に広げる力も働かなくなるので、歯並びや骨格が正常に形成されなくなったりします。
3-3姿勢が悪いと口呼吸になりやすい
普段どのような姿勢をしているか、というのも歯並びや骨格の形成に関わってきます。猫背や巻き肩の状態になっていると、胸が狭まって呼吸がしにくくなるので、酸素を多く取り込もうとして、口呼吸になりやすくなります。
4.舌の正しい位置を覚えるためのお口のトレーニング
子どもの歯並びや顎の骨の形をよくしていくためには、常に舌の位置を正しい位置に置くこと、そしてお口周囲の筋肉と舌を正しく使うことが大事です。そのためのトレーニングをMFTと呼びますが、今回はその中でも簡単にできる方法をいくつかご紹介します。
4-1スポットポジション
舌の先端を置くべき位置「スポット」に確実に舌の先端を置くために、割り箸やストローなどをまずはスポットに軽く5秒ほど当てて感覚を残し、その部分に舌の先端を5秒置くようにします。初めはトレーニングの時に位置を確認し、慣れてきたら、常にこのポジションに置くことを意識するようにしましょう。
4-2ポッピング
舌の先をスポットに位置させ、口蓋(上顎の天井部分)に舌全体をくっつけます。舌はそのままくっつけたまま口を開き、その後、舌を離すときに「ポンッ」と音を出します。これを1日10~15回繰り返します。
4-3オープンアンドクローズ
舌全体を上顎に吸いつけ、口を大きく開け、舌小帯(舌の裏側のスジ)を十分に伸ばしてから、そのままゆっくり軽く歯を合わせていきます。これを1日に10〜15回繰り返します。
5.まとめ
歯並びや骨格は、残念ながら一度悪くなってしまうと自力で良くするということはできません。ですが、今回ご紹介した方法を成長期の段階で実践していくことで、自然にきれいな歯並びや骨格が作られやすくなります。
お口周辺や舌の筋肉を正しく使うためのMFTは、今回ご紹介した方法以外にもたくさんあり、矯正歯科で受けることができますので、興味のある方は相談してみましょう。
この記事の監修者
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