すきっ歯の見た目が気になる人もいるのではないでしょうか。すきっ歯はチャームポイントにもなり得るもので、国によっては「幸運の歯」と捉えられるなど、特に日本以外の国においては必ずしもネガティブなイメージではありませんが、ご本人がコンプレックスに感じてしまうこともあるようです。
今回はそんな方のために、すきっ歯の原因やリスク、治療法、そして予防方法についてご紹介していきます。
1.すきっ歯の原因
すきっ歯は「空隙歯列(くうげきしれつ)」と呼ばれます。すきっ歯になってしまう原因として、次のようなものが挙げられます。
1-1骨格・歯が原因の場合
◆顎と歯の大きさのアンバランス
顎の大きさが大きめでそれに対して歯の幅が小さい場合、歯と歯の間の隙間が開いてしまいます。
◆歯が足りない(先天欠如歯)もしくは失った
歯の本数が生まれつき足りない場合、もしくは歯を喪失した場合にも隙間が開きます。
◆過剰歯
上の前歯の歯間の骨の中に過剰な歯が埋もれていて、歯間が開いてしまうこともあります。
◆過蓋咬合(噛み合わせが深い)
噛み合わせた時に下の前歯が見えないような深い噛み合わせの場合、下の歯が上の歯を突き上げ、歯間に隙間が開くことがあります。
1-2軟組織が原因の場合
◆上唇小帯(じょうしんしょうたい)の異常
上唇の裏側から上前歯の間の歯茎に伸びるスジが太すぎて、前歯の間に入り込んでいる場合、それによって前歯が開いてしまうことがあります。
◆舌小帯(ぜつしょうたい)の異常
舌の裏側にあるスジが太くて短いと、前歯の裏側に力がかかりやすくなることで歯と歯の間に隙間ができることがあります。
◆舌が大きすぎる
舌が大きいと、舌が常に前歯を前方に押す形となるため、すきっ歯になることがあります。
1-3歯に力をかける癖
舌を歯に押し付ける癖がある場合、指しゃぶりをやっている場合にも、歯や骨に内側から力をかけるため、すきっ歯となることがあります。
1-4歯周病
歯周病で歯を支えている骨が痩せてしまうと、噛む力に負けてしまって歯が動き、隙間があいてきます。
1-5永久歯が生えるための準備として
これは、乳歯の段階で現れるもので、霊長空隙、発育空隙といった正常なものです。この空隙があることで、乳歯よりも大きな永久歯が生えてきたときに、重ならずに歯並びがきれいに並び、その後に隙間は閉鎖します。この隙間がない場合、歯並びがガタガタに重なるリスクが出てきます。
2.すきっ歯のリスク
すきっ歯といっても程度はさまざまで、必ずしもリスクや悪影響があるというわけではありません。ただ、程度によっては次のようなリスクや悪影響を及ぼすこともあります。
2-1発音の問題
隙間が大きい場合、発音時に空気が抜けて発音しにくくなる場合があります。
2-2見た目への影響
見た目がコンプレックスとなってしまったり、からかいの対象になってしまったりすることで、精神的な影響を及ぼすこともあります。
2-3食べ物が詰まりやすい
食べ物が挟まりやすくなるため、食事の際に煩わしさを感じてしまうことがあります。また、虫歯や歯周病のリスクを高めてしまうことがあります。
3.すきっ歯の治療法
すきっ歯を改善する方法には、次のようないくつかの方法があります。治療法を選ぶ際には、メリット・デメリットをよく理解した上で選択するようにしましょう。
3-1歯列矯正
すきっ歯を根本的に解決したいなら、歯の位置を動かす歯列矯正がおすすめです。
歯列矯正には、ワイヤー矯正、舌側(裏側)矯正、マウスピース矯正といったいくつかの方法があり、舌側矯正やマウスピース矯正なら、周囲に気づかれずに矯正治療をしていくことも可能です。
メリットは、根本的、かつ健康的な解決ができること、デメリットは費用や期間がかかってしまうことです。
3-2ラミネートベニア
歯の表面をほんの少しだけ削り、歯の表面に付け爪をするようにセラミックのベニア(薄い板状のもの)を貼り付け、隙間を埋める方法です。
メリットは、少ない回数(2回)で問題を解決できること、歯の変色や形も改善できること、デメリットは、保険がきかないので1本あたり数万円の費用がかかる、歯を少し削る必要がある、歯の幅が大きくなってしまうことがある、という点です。
3-3ダイレクトボンディング
最も早く、手軽に解決できる方法です。歯の表面にコンポジットレジンと呼ばれるプラスチックの材料を盛り足し、形を整えて歯の隙間を埋めることができます。通常、1回の治療で終わらせることができます。
メリットは早く、費用を抑えて問題解決できること、歯を削らないこと、デメリットは、月日が経つにつれて変色すること、外れてしまうことがあるということ、そして歯の幅が大きくなってしまう、ということです。
3-4セラミッククラウン
歯を削ってセラミックの被せ物をし、隙間を埋める方法です。
メリットは、比較的少ない回数で(2〜3回)問題解決できること、歯の形や変色も改善できること、歯の向きも修正できることで、デメリットは、歯を多く削る必要があること、保険外なので費用が10〜20万円台程度かかってしまうこと、歯の幅が大きくなってしまうことです。
4.すきっ歯の予防方法
すきっ歯は、元々生まれつきの原因がある場合など、予防ができないケースもありますが、後天的なことが原因の場合、気をつけることで予防できるケースもあります。後天的にすきっ歯を防ぐためには、次のようなことに気をつけると良いでしょう。
4-1歯に力をかける癖をやめる
歯に力をかけてしまうような舌の癖があるようであれば、すぐにでもやめるようにしましょう。特に成長段階にあるお子さんの時期にそれをやっていると骨格まで変形してしまう恐れがあるので、早めにやめさせることが大事です。
4-2小帯の問題をできるだけ早く解決する
上唇小帯、舌小帯の異常がある場合には、できるだけ早めに切除することで、問題を回避することができます。
4-3過剰歯を放置しない
特に、上の真ん中の間の隙間がなかなか閉じない場合、過剰歯が原因になっていることがあります。過剰歯があるかどうかは、レントゲンを撮ることでわかりますので、心当たりがあるようであれば、一度歯科で診てもらいましょう。
4-4歯を失わない、歯周病に気をつける
歯を失わないように虫歯や歯周病予防を徹底しましょう。また、歯周病は一般的に、30代くらいから発症してゆっくりと進行していきます。若いうちから歯周病ケアをきちんと行えば、進行を止めることは可能なので、継続して歯科医院でのケアも含めてしっかりと行っていきましょう。
5.まとめ
すきっ歯は、もともと生まれつきの要素が関係して起こっている場合もありますが、歳をとるにつれて、噛み合わせが変わってきたり、歯周病が悪化したりすることでだんだんとひどくなることも珍しくありません。
ただ一つだけ言えるのは、すきっ歯は放置しておいても自然に閉じることはなく、むしろ悪化することが多い、ということです。
今回ご紹介した方法で、すきっ歯の問題を解決することはできますが、噛み合わせや歯周病の問題が原因としてある場合には、歯の隙間だけ埋めたとしても、同じ問題がただ繰り返されるだけになってしまいます。
そのため、できれば、その場限りですきっ歯の見た目だけをなんとかしようとするのではなく、矯正治療や噛み合わせの治療、歯周病治療などをしっかりと行い、なるべく根本的な解決をしていくのがおすすめです。
この記事の監修者
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