子どもの矯正(小児矯正)って本当に必要?メリット・デメリットは?
今回は、子どもの矯正について、具体的にどのような治療法があるのか、またそれで得られる効果、そして、子どもの矯正のメリットやデメリットについてご紹介していきます。
1.子どもの矯正って本当に必要?どんな治療をするの?
大人の矯正(成人矯正)で行われる方法は、ワイヤー矯正(表側矯正、裏側矯正)、透明なマウスピースタイプ装置の矯正といったものです。
子どもの矯正(小児矯正)で行われる矯正治療には、第1期治療と第2期治療があります。矯正歯科では、主に次のような方法が行われており、お子さんの歯並びに合った治療法が選択されます。
1-1 第1期治療
第1期治療は、永久歯が全て生え揃うまで(12〜13歳くらい)に行う治療です。この治療の目的は、成長期であることを生かして、骨格の成長をコントロールし、永久歯が正しく生える土台を作っていくことです。第1期矯正であごの骨の成長がコントロールされれば、抜歯せずに矯正治療ができる可能性が高くなります。歯並びによっては、第1期治療だけで治療を終わらせることも可能です。
◆MFT(筋機能療法)
歯並びや骨格の形成には、口周囲の筋肉(舌や唇)の使い方が大きく関係しています。M FTは、口周囲の悪い癖を取り除き、筋肉を鍛えて正しく使えるようになることで、正しい歯並びや骨格を作り、それを維持させることができるようになる治療方法です。「プレオルソ」と呼ばれる器具を使用して行うこともあります。
◆ムーシールド
マウスピース型の矯正装置で、前歯の噛み合わせが反対になっているお子さんに対して使用します。通常は、主に、夜眠っている間に使用します。ムーシールドをつけることで、お口周囲の筋肉が正しく使われるようになるため、受け口が自然に改善されやすくなります。
◆ヘッドギア
出っ歯の場合に、上あごの過剰な成長を抑え、下あごの成長を促す目的で使用されます。1日に12時間装着する必要があり、在宅時のみの使用となります。
◆チンキャップ
受け口の場合に、下あごの成長を抑制する装置です。頭を固定源にして、下あごの成長を抑制していきます。1日10〜12時間くらいの装着が必要で、在宅時に使用します。
◆リンガルアーチ
歯の裏側に針金を沿わせ、持続的に力をかけて、歯を効率よく横に広げていきます。表からは見えないので見た目は気になりませんが、慣れないうちは喋りにくい、食べにくい、ということをお子さんが訴えることもあります。
◆床矯正装置
歯列の横幅を拡大したり、大まかに歯を動かしたりすることができる取り外し式の装置で、基本的に食事と歯磨きの時以外はずっと装着します。ただし、歯を完璧にきれいに並べることはできないので、その必要性がある場合には、第2期治療が必要になります。
1-2 第2期治療
第1期治療が終わり、永久歯が生えそろった後、より歯をきれいに並べるなど、必要に応じて行われるのが第2期治療です。第2期治療は、本格矯正とも呼ばれ、成人矯正と同様に、永久歯を細かく動かし、きれいに整った歯並びに仕上げて行きます。やる内容はほぼ成人矯正と同じなのですが、第1期治療で骨格が整い、ある程度きれいに並んでいるため、治療期間を短めにすることができます。
◆ワイヤー(ブラケット)矯正
歯の1本1本に装置(ブラケット)を付け、ワイヤーを通して歯並びを整えていきます。
◆マウスピース矯正
透明なマウスピース型装置を定期的に交換していくことで、歯並びが徐々に整っていきます。
2.子どもの矯正のメリット
子どものうちから矯正をすることで、次のようなさまざまなメリットがあります。
2-1 顔の形が整う
あごの骨の成長をコントロールすることができるので、骨格をよりきれいな形にしていくことができます。成長した後から矯正をする場合には、このようなことはできません。
2-2 抜歯をせずに矯正できる可能性が高くなる
子どものうちから矯正をしておくことで、骨格をできるだけ正常に発育させることができるので、抜歯をして(間引いて)矯正をする必要がなくなるケースも多くあります。抜歯をして並べる場合、通常、上下左右の第一小臼歯(前から4番目の歯)を抜くことが多いため、抜歯をしないで並べられるのは、とても大きなメリットだと言えます。
2-3 痛みを感じにくい
成人矯正と比べて、歯にかかる力の負担が少ないのと、装置がシンプルなので、矯正治療による痛みを感じにくく、お子さんにとって楽です。
2-4 費用を抑えられる可能性がある
第1期治療だけで矯正治療が終えられる場合、治療費をかなり低く抑えることも可能です。
2-5 将来的に手術を避けられる可能性がある
上顎前突、下顎前突、上下顎前突などの場合で、骨格が大きく出てしまっている場合、大人になってから矯正しようとしても、骨格は変えられません。もし、あごの形まで治すのであれば、あごの骨を切って矯正する「外科矯正」が必要になります。
一方、子どものうちから矯正治療を始めることによって、あごの骨の過度の成長を抑えることができますので、手術のリスクを避けられる可能性があります。
2-6 本格矯正の期間を短くすることができる
第1期治療で骨格の土台ができ、永久歯もほぼ良い位置に並んでいるため、歯の表面にワイヤーをつけて行う、もしくはマウスピースで行う本格矯正の期間を短く済ますことができます。
3.子どもの矯正のデメリット
子どもの頃から矯正治療をすることは大きなメリットをもたらしますが、一方で、デメリットもあるので、治療を受ける前にはそれを理解しておくようにしましょう。
3-1 虫歯や歯肉炎のリスクが上がる
使用する矯正装置の種類にもよりますが、特に固定式の装置を使用する場合、装置の部分に歯垢が溜まりやすくなるので、虫歯や歯周病のリスクを通常よりも高めてしまう可能性があります。そのため、特に、小さいうちから矯正治療を始める場合には、保護者の方が毎日仕上げ磨きをしてあげるなど、特にお口のケアに注意を払う必要があります。
3-2 治療期間が長くかかることがある
治療を開始する年齢や、お子さんの歯並び、骨格にもよりますが、場合によっては、あごの骨の成長が終わる15〜16歳くらいまで経過を見て、必要に応じて治療を続けなければならないので、治療期間が長くなることがあります。
4.まとめ
お子さんが小さいうちから矯正装置をつけるのには抵抗がある、それなら大きくなってから矯正させたい、という方も親御さんもいるかもしれません。ですが、成長の盛んな子どもの時期に矯正を始めることは、大きくなってからでは得られない多くのメリットがあり、治療の仕上がりの面においても大きな差が出てきます。
子どもの矯正治療を開始する理想的な時期というのは、それぞれのお子さんの歯並びによっても違ってきます。そのため、「お子さんの歯並びが気になる」という場合には、できるだけすぐ歯医者さんに連れて行き、なるべくお子さんに合った時期に治療が始められるようにしておくとよいでしょう。
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