掌蹠膿疱症って歯科で治せるの?

掌蹠膿疱症って歯科で治せるの?
手のひら、足の裏に膿を持ったような水膨れができては潰れ、という症状を繰り返して痒みや痛みが辛い・・・そんな症状でお困りの方はいらっしゃいませんか?もし心当たりのある場合、それは掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)かもしれません。

掌蹠膿疱症は皮膚の疾患なので、皮膚科でしか治せないと思われがちですが、実はその原因がお口の中から来ている場合も多く、歯科治療で治せる、または症状が改善する可能性があります。

 

 1. 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは

 

 1. 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは

 

掌蹠膿疱症とは、主に、手のひら、足の裏という特定の部位が赤くなり、膿を持った膿疱が繰り返しできる難治性、かつ原因不明の病気です。皮膚の病気であるため、感染性であると思われていることがありますが、ウイルスや細菌を含まないため、人にうつることはありません。

 

2. 掌蹠膿疱症の症状

 

掌蹠膿疱症は、40代以降に好発し、はじめは、主に手のひらや足の裏にかゆみを伴う多数の小さな膿疱が急に現れます。その状態がしばらく続いた後に、膿疱は乾いてカサブタとなって剥がれ落ち、周囲の皮膚にも炎症が広がって赤みを帯び、ガサガサした状態となります。

爪に症状が現れる場合には、爪が変形したり、剥がれてきたりすることがあります。このような経過が良くなったり、悪くなったりということを繰り返し、悪化すると日常生活に支障となるほどの痛みが出ることもあります。

 

3. 「掌蹠膿疱症」と歯科との関連性

 

掌蹠膿疱症は、詳しい原因は不明ではあるものの、歯科と関連が深い病気だと言われています。例えば、お口の中の金属を除去すると症状が改善することがあることから、金属アレルギーとの関連が疑われています。また、歯周病や歯根周囲の病巣の治療をすると掌蹠膿疱症の経過が良くなっていく場合もあります。

そのため、掌蹠膿疱症が疑われるような症状がある場合には一度歯医者に予約を入れ、お口の状態の検査を受けてみられることをおすすめします。

 

4. 掌蹠膿疱症の原因になりえるもの

 

現在、掌蹠膿疱症の原因になりえるものとして関連が疑われているのは次のようなものです。ただし、以下のものがあるからといって必ずしも掌蹠膿疱症になるわけではなく、以下の因子が背景にあり、体に何らかのストレスがかかったり、別の因子など、複数のものが絡み合ったりすることによって掌蹠膿疱症が発症したり増悪したりすると考えられています。

 

4-1 金属アレルギー

 

歯科金属のアレルギーは、お口の中だけでなく、全身の皮膚にもトラブルを起こすことがよく知られています。実際、まさか手のひらや足の裏の膿疱や炎症が、お口にある金属によって起こっているとは思わず、皮膚科での治療を繰り返しても良くならない、ということも珍しくありません。

金属を除去して症状が改善する例もありますが、次に挙げる病巣感染がある場合には、その治療も必要となるため、両方の治療を行っていきます。

 

4-2 病巣感染

 

体のどこかにほとんど症状のない慢性的な炎症がある場合、それが原因となって体の別な場所に二次的なアレルギーのような状態の病気を発症することがあり、この現象を「病巣感染」と呼んでいます。

掌蹠膿疱症の原因となる病巣感染として挙げられるものとしては、歯根の先端や歯の周囲に存在する歯周病、慢性扁桃炎、慢性副鼻腔炎などがあります。

 

4-3 タバコ

 

掌蹠膿疱症を患っている患者さんの8割が喫煙しているという報告があります。また、本人が喫煙していなくても、受動喫煙によっても掌蹠膿疱症のリスクが高まると言われています。

タバコをやめることによって症状が軽快することもありますが、実際にそれだけで治癒することはほとんどないと言われています。タバコは歯周病を引き起こす重大なリスクファクターとなっているものなので、喫煙者は歯周病を患っている可能性が高く、その歯周病が発症に関与しているとも考えられ、歯周病に対する治療も必要になってくると考えられます。

 

4-4 その他

 

上記以外でも、ビオチン(ビタミンの一種)不足や高温多湿、免疫応答の異常といったものも原因となりうるものとして考えられています。

 

5. 掌蹠膿疱症の検査・診断

 

5. 掌蹠膿疱症の検査・診断

 

掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏の膿疱といった形で症状が現れる病気なので、当初、患者さんは皮膚科を受診するのが一般的です。

皮膚科的な治療としては、まずは、症状を抑える対症療法として、ステロイド製剤の外用薬や免疫抑制剤の内服といった治療などが行われることが一般的です。ところが、この治療法では原因が解決されないため、再発や悪化を繰り返し、改善することなく治療が長期に及びます。

そこで、その流れから検査をして掌蹠膿疱症かどうかを診断することがあります。掌蹠膿疱症かどうかを診断するためには、皮膚科にて、拡大鏡を使った視診、皮膚生検、血液検査、金属パッチテスト、といった検査を行います。

その後、掌蹠膿疱症と診断され、歯科的な慢性病巣感染が疑われる場合には、歯科へ紹介されるという流れになります。

 

6. 歯科治療で掌蹠膿疱症が改善

 

歯科的な慢性炎症が原因と疑われる場合、歯科でお口全体の検査、レントゲン検査等を行い、掌蹠膿疱症の原因となりうる状態が確認されるかどうかを詳しく検査していきます。

そして、患者さんと相談した上で必要と思われる治療を行っていきます。掌蹠膿疱症に対する歯科的な治療法としては、次のようなことが行われ、これにより症状の改善が見られるケースもあります。

 

6-1 銀歯を除去してセラミックに替える

 

パッチテストにて歯科金属に対して金属アレルギーがある場合、銀歯を外してセラミックなどの金属を使用しない材料に替えることで、症状の改善が認められることがあります。ただし、一見、金属を使用していないように見える被せ物の場合でも、内部に金属が使われていることがあるため、そのような場合には内部の金属を取り除く必要があります。

 

6-2 慢性根尖性歯周炎の治療をする

 

レントゲン検査にて歯根の先端の周囲に膿がたまっているのが確認された場合、その病巣が原因となっている可能性があるため、被せ物を外して根の治療(感染根管治療)を行い、病巣が治ってくるにつれて掌蹠膿疱症の症状の改善が見られるケースがあります。

 

6-3 歯周病の治療をする

 

慢性的な歯周病の炎症がある場合には、歯周病治療を行います。具体的には、歯の周囲の歯石や歯垢を丁寧にクリーニングし、歯周病細菌を減らしていきます

 

掌蹠膿疱症の発症には、いくつかの原因が重なり合って起こっているケースも多いため、以上の治療を複合的に行っていくことにより、掌蹠膿疱症の改善が見られるケースもあります。また、タバコも掌蹠膿疱症のリスク因子と考えられているため、喫煙者の方は禁煙することが勧められます。

 

7. まとめ

 

掌蹠膿疱症は、皮膚科的な治療を続けても治らず、長期間辛い思いをしている方が少なくありません。ですが、今回ご紹介したように、実は歯科的なものが関係していることも多く、歯科治療を行うことで症状の改善が見られるケースもあります。

もちろん、原因としては歯科以外にも扁桃腺炎や副鼻腔炎といった歯科とは違うところにある場合もあります。ただ、一つの可能性として、歯科的な原因を疑ってみるというのも必要であり、一つ一つ、可能性として考えられる要因を取り除いていくことが大事です。

いずれにしても、金属アレルギーがあったり、歯の周囲に病巣があったりする場合には、たとえ症状がないとしても、体にとっては放置しておくことは良いことではありませんので、そのような原因を除去するということは、体の健康にとっても十分意味のあることだと言えるでしょう。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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