骨粗しょう症と歯科治療の関係と副作用

骨粗しょう症と歯科治療の関係と副作用
骨がもろくなる病気「骨粗しょう症(こつそしょうしょう)」

日本における国内の患者数は、高齢化が進むにつれて年々増加していると言われており、自覚症状のない人を含めると約1280万人もの人がかかっているとされています。

骨粗しょう症は高齢の女性に多く見られ、60歳代女性の3人に1人、70歳代女性の2人に1人もの人がかかっている可能性があると言われているありふれた病気です。

このように年を取るにつれ高頻度で現れる骨粗しょう症ですが、骨粗しょう症にかかっている人は、歯科治療の内容によっては危険を伴う場合があるので注意が必要です。

今回は骨粗しょう症と歯科治療の関係、骨粗しょう症の薬を飲んでいる人が歯科治療で起きやすい副作用についてご紹介します。

 

1.骨粗鬆症とは

骨粗しょう症は「骨の中身が粗く細かい穴が沢山できた状態」ということを意味し、骨の密度や骨の質が劣化して骨の強さが低下し、骨折をしやすくなっている状態のことをいいます。

骨粗しょう症のかかりやすさは男女間で差があり、患者の8割が女性と言われています。この差の理由として、女性の場合、閉経することで女性ホルモンが減少し、その影響により骨の量が減ってしまう、ということが挙げられます。

そのため、骨粗しょう症は閉経後の高齢女性に特に多くみられますが、初期段階に自覚症状は無いため、骨折して初めて気付くといったケースも少なくありません。

また、年齢的なもの以外にも、慢性腎不全や糖尿病、胃切除による影響、ステロイド系抗炎症薬の長期使用、喫煙などによっても骨粗しょう症を引き起こすことがあるため、このようなものに当てはまる人は、それほど年を取っていなくても骨粗しょう症にかかるリスクがあると考えたほうが良いでしょう。

 

2.骨粗しょう症と歯科治療との関連性

2.骨粗しょう症と歯科治療との関連性

骨粗しょう症にかかっている人は、歯科において次のようなことが起こりやすくなるため、歯科治療時には注意が必要です。

 

2-1歯を支えている骨が減りやすい

骨粗しょう症にかかって影響を受けるのは全身の骨です。それゆえ、歯を支えている顎の骨もその影響を例外なく受けてしまいます。

いくら歯が健康でも、歯を支えている骨がしっかりしていなければ歯がそこにとどまることはできないので、骨粗しょう症にかかることで骨が歯をしっかりと支えることができなくなり、結果的に歯を失う時期が早くなってしまう可能性が高くなります。

 

2-2歯周病が進行しやすい

歯周病は歯茎が腫れるだけの病気と思われがちですが、歯周病の怖いところは歯を支えている骨が徐々に溶かされ、支えを失って抜け落ちてしまうところです。

歯周病による骨の破壊は、多くの場合ゆっくりと進行しますが、骨粗しょう症にかかっている場合、骨が弱くなっているので進行が急激に進んでしまい、みるみるうちに歯を失ってしまう恐れもあります。

 

2-3インプラントが難しくなる可能性がある

歯を失った場所に人工歯根を埋めて被せ物をするインプラント治療では、人工歯根が骨にしっかりと固定される必要があります。ところが、骨粗しょう症にかかっている場合、人工歯根をしっかりと固定するだけの骨がなくなってしまっている場合もあり、インプラント治療ができないと判断されることもあります。

 

2-4骨折のリスクが高くなる

骨がもろくなってしまっているので、転倒をした場合など、顎に強い力がかかると顎の骨を骨折してしまうリスクがあります。
そのため、転んでぶつけた際などにおいては、顎の骨のレントゲンを撮って確認する必要性があります。

 

3.骨粗鬆症の薬を服用中、歯科治療で起こる副作用

3.骨粗鬆症の薬を服用中、歯科治療で起こる副作用

3-1外科処置の場合には顎骨壊死が起こることも

骨粗しょう症の薬の中によっては、副作用として抜歯した骨の治りが悪くなり、顎の骨が壊死(腐ること)してしまうリスクがあります。また、インプラントなど骨に関わる手術の場合にも同様のリスクがあります。

骨粗しょう症の薬にもいくつか種類がありますが、このような副作用を起こす薬として特に注意が必要なのは、「ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)」「デノスマブ」に代表される薬です。

これらの薬は効果が高いことで知られていますが、顎の骨に影響が及ぶ治療の場合には注意が必要なのです。

ちなみに、服用している期間が長く、特に4年以上服用している場合には骨の内部の蓄積量が多くなるため、一気にリスクが上がることが分かっています。

 

3-2とくに注射薬の場合には要注意

骨粗しょう症の治療薬は飲み薬と注射薬がありますが、注射薬を受けている方は飲み薬の場合よりもかなりリスクが高くなることが分かっていますので、より一層注意が必要です。

 

3-3外科治療以外も油断は禁物

骨粗しょう症治療薬を飲んでいる場合に一般的にリスクとされるのが抜歯に代表される「外科処置」です。

ですが実際には外科処置以外にも他のことで顎骨壊死を起こすケースが報告されています。

具体的に顎骨壊死を起こしうる原因としては、

  • 抜歯
  • インプラント
  • 他の外科処置
  • 入れ歯
  • 歯周病
  • その他の原因

といったことが報告されています。

 

4.骨粗しょう症の方が歯科で注意したいこと

4-1服用中の薬を歯科医に伝える

骨粗しょう症で薬を出されている方は、必ず歯科医師にその旨を伝えるようにしてください。具体的には、処方されている薬の種類、服薬期間、投与方法(内服薬または注射薬)といった詳細を伝える必要があるので、お薬手帳を忘れずに見せるようにしましょう。

薬の種類や服用期間によっては、安全のために治療を慎重におこなう必要があります。

 

4-2抜歯やインプラント治療は見送ることも

骨粗しょう症の薬を飲んでいる方は、抜歯やインプラント治療といった外科治療によるリスクを避けるために、治療のタイミングや方法を十分に検討する必要があります。
骨粗しょう症の主治医とも相談し、必要に応じて休薬措置をとる、もしくはインプラントの場合には治療自体を見送ったほうが良い可能性もあります。

 

4-3口内を清潔に保つ

口の中が不潔で細菌が多い状態だと細菌感染を起こすリスクが高くなりますので、毎日の歯磨きを丁寧におこない、口内はできるだけ常に清潔に保つようにしましょう。

 

4-4定期的なメンテナンスを受けておく

できるだけ抜歯といった事態にならないように、普段から丁寧な歯磨きをおこなうとともに、定期的に歯科を受診して早期発見・早期治療、クリーニングを受け、歯を健康な状態に保っておくようにしましょう。

特に歯周病は進行性の病気なので、定期的な治療が欠かせません。特に症状がないから、と放置していると急激に悪化することもあるので、定期的に治療を受けるようにしましょう。

 

5.まとめ

骨粗しょう症は体の骨折に注目が置かれがちですが、実はとても歯科との関連も深い病気です。骨粗しょう症にかかると歯を支える骨が影響を受け、歯を支えられなくなって歯が抜ける時期が早まる恐れがあるので、普段からビタミンD補給やカルシウムなどの栄養バランスに気を付け、適度な運動をする、日光に当たるといったことも意識しましょう。

骨粗しょう症の薬を服用している方でも多くの場合には歯科治療を問題なく受けることが可能ですが、リスクの高い治療の場合には細心の治療が必要なので、歯科医と主治医にはしっかりと情報を伝えておくようにしましょう。

また、口内の悪化を防ぎ、健康なお口を保つためにも、口内の清潔を常に保つこと、定期的に歯のケアをしていくことも忘れないようにしましょう。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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