糖尿病になると歯がボロボロになるって本当?
糖尿病は様々な合併症を引き起こし、体のあちこちの臓器を侵してしまいますが、口の中にも大きな影響を及ぼし、「歯がボロボロ」になってしまうなど、とても不便な状況を引き起こすことも少なくありません。
そこで、今回の記事では次のことについてわかりやすく解説していきます。
- 糖尿病になると「歯がボロボロ」になってしまう4つの原因
- 「歯がボロボロ」の状態を放置するとどうなる?
- 「歯がボロボロ」の状態を改善すると糖尿病を予防できる?
- 「歯がボロボロ」になってしまった場合の治療法
糖尿病は誰でもかかる可能性がある病気です。
ぜひ今回の記事で糖尿病と歯の関係について理解を深め、健康維持に役立ててみてください。
1.糖尿病になると「歯がボロボロ」になる4つの原因
糖尿病になると「歯がボロボロ」になる原因として次のようなことが考えられます。
1-1唾液の分泌量が減ってしまう
糖尿病は、血液中のブトウ糖が多くなることで血糖値が高くなってしまう病気ですが、体は血糖値を一定に保とうとするので、血液中の糖の濃度を薄めようと、体内の水分を血管内に引き込んできます。
その結果、口の中の唾液の分泌量も減ってしまい、口の中が乾いた状態になります。唾液は口の中の健康を保つ役割をしていますので、それが少なくなってしまうと、虫歯や歯周病のリスクが一気に高まってしまうことになります。
1-2感染症にかかりやすくなる
高血糖の状態が続くと、免疫に働く白血球の機能が低下することや、細かい血管の血流が悪くなって細胞に栄養や酸素が行きわたりにくくなることなどから免疫機能が働きにくくなり、感染症にかかりやすくなります。
また、細小血管の血流が悪くなって酸素不足になることで、痛みを感じる神経が鈍くなり感染症にかかったことに気づきにくくなります。
歯周病も虫歯も細菌感染症ですから、こういった影響を受けて感染症にかかりやすく、そして悪化も起こしやすくなります。
1-3歯科治療の効果が出にくい
高血糖の状態では末梢の血管が酸素不足になること、そして治癒に働く白血球がうまく働かないことから、特に歯周病治療においてはせっかく治療をしても治療の成果が現れにくく、どんどん悪化してしまう傾向があります。
1-4歯の治療を中断しやすい
糖尿病の状態によっては、出血を伴う治療ができなくなることがあります。
それはなぜかというと、治療中に歯茎から出血をすると、その部分から血管に細菌が入りこみ、血糖のコントロールができていない状態では菌血症を起こす危険性があるからです。
また、糖尿病の患者さんでは、歯科治療で通常使用される麻酔薬では血糖値を上昇させる作用があるため、どうしても麻酔効果の弱い別の麻酔薬を使わざるを得ません。
そうすると、治療時に痛みを感じやすいので歯科治療を避けてしまう、ということになってしまい、「歯がボロボロ」になる経過をたどりやすくなります。
2.「歯がボロボロ」の状態、放置してしまうとどうなるの?
糖尿病にかかっている状態で「歯がボロボロ」の状態を放置すると、歯の状況は急速に悪化していく可能性が高いです。
虫歯に関しては、進行して内部に感染を起こし、感染が急激に進んで歯根の周囲に膿を溜めてしまう、という経過をたどりやすくなりますし、歯周病の場合にはとくに糖尿病との関連性が深いため、一気に状況が悪化し、歯茎の腫れや痛みを繰り返して歯が次々に抜けてしまうということにもなりかねません。
実際に、糖尿病にかかっている人はそうでない人に比べて歯を失っている人が多いことも調査の結果で分かっています。
3.「歯がボロボロ」の状態を改善すると糖尿病を予防できる!?
歯と全身の健康状態は関係し合っており、全身の病気が歯に影響を及ぼすだけでなく、歯の健康状態の悪化が全身に影響を与えることも、現在ではもはや常識になってきています。
とくにその中でも糖尿病と歯周病には深い関わり合いがあり、片方を治療すると、片方に良い影響を与えることが分かっています。
3-1歯周病治療をすると糖尿病が改善しやすい
糖尿病が良くなると免疫機能が正常化して歯周病も改善しやすくなることは以前より知られていましたが、歯周病治療をすると糖尿病が改善した、という報告も近年たくさん上がってきています。
歯周病菌は血管の内部に入り込むと、炎症性物質を放出し、これが血糖の調節をするインシュリンの働きを邪魔して、糖尿病を悪化させます。
歯周病で「歯がボロボロ」の状態でも、治療をすることで歯周病菌が減少し、インシュリンの働きを邪魔することがなくなるので、糖尿病も改善しやすくなるのです。
3-2噛めるようになって食生活が改善するので糖尿病が改善しやすい
「歯がボロボロ」の状態だと、しっかりと噛むことができないので、どうしても食事内容としてやわらかい物や高カロリーのもの、つまり糖質の多いものが多くなりがちです。
しかし、「歯がボロボロ」の状態を治療することで、よく噛むことができるようになり、野菜や肉などもバランスよく食べられるようになります。
そうするとおのずと糖尿病も改善しやすくなります。
4.「歯がボロボロ」になってしまった場合の治療法
4-1虫歯治療
虫歯がある場合にはその状態に応じた虫歯治療が必要になります。神経の部分にまで進行している場合には根の治療(根管治療)が、虫歯がひどい場合には抜歯が必要になることもあります。
4-2歯周病治療
歯周病は成人の8割以上がかかっているとも言われる、ほとんどの人に関わりのある病気です。初期のうちはほとんど自覚症状がないので、自分でかかっていないと思っていてもかかっていることがあります。
虫歯と同様、こちらも進行性の病気ですので、なるべく初期のうちに治療を開始することで進行を止めることができるとともに、糖尿病に関しても改善効果が期待できるでしょう。
4-3入れ歯治療、インプラント治療、ブリッジ
虫歯や歯周病の状態が悪く、歯を抜くことになった場合には、歯を補う手段として入れ歯治療やインプラント治療、ブリッジといった治療を行います。
ブリッジは抜けている本数が少ない場合にのみ可能で、入れ歯やインプラントは抜けた本数に関わらず、治療が可能です。
ですが、インプラントの場合、骨の状態が良くない場合や持病の状態によっては適さない場合もありますし、特に糖尿病がある場合には、しっかりとコントロールできていなければ、手術自体行えない可能性が高くなるのと、いざ治療をしても感染を起こしてインプラントが抜け落ちやすいため、慎重に判断する必要があります。
5.まとめ
今回ご紹介したように、糖尿病になると唾液の減少や免疫力の低下などによりお口の健康状態にも影響が及び、虫歯や歯周病のリスクが一気に高まって「歯がボロボロ」という事態に陥る可能性があります。
また、糖尿病の状態が悪化すると、出血を伴う治療の際に全身への感染リスクが増大しますし、通常使用する麻酔も使えなくなるので、歯科治療を受ける際にさまざまな制限が出てきてしまい、さらに「歯がボロボロ」になる、ということになりかねません。
そのようなことにならないためにも、誰にとってもリスクのある糖尿病や歯周病には特に注意を払い、定期検診を受けて必要に応じて医療機関にかかるなど、予防や早期治療に力を入れていく必要があると言えるでしょう。
成人以降の方はぜひ、意識して取り組んでみてください。
この記事の監修者
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