歯が割れる、歯根破折の原因と治療法は?

歯が割れる、歯根破折の原因と治療法は?
歯が根っこまで真っ二つに割れてしまう「歯根破折(しこんはせつ)」
実はそれほど珍しいものではありません。

歯を失う原因というと、むし歯と歯周病がその2大原因ですが、その次に多いのが歯根破折となっており、実際に、多くの人が歯根破折によって歯を失っている現実があります。

ただ、すべての人に歯根破折のリスクがある、というわけでもなく、歯根破折を起こしやすい要素を持った人、というのがあります。

今回は、歯根破折を起こしてしまう原因、歯根破折の予防法、そして、歯根破折を起こしてしまった場合の治療法について解説していきます。

 

1.歯が割れる=歯根破折の原因

 

歯根破折は、主に次のような原因で起こります。多くの場合は、一つの原因というよりは、以下の原因が複数重なり合うことで起こると考えられます。

 

1-1神経を抜いている

歯が割れてしまう場合、そのほとんどは神経を抜いた歯に起こります。それはなぜかというと、神経を抜いた歯には栄養が行き渡らず、弾力性が失われ、強い衝撃が加わると枯れ木のようにポキッと割れやすいからです。

 

特に、神経を取った後に、歯根に金属の土台が入っている場合、噛み合わせの力がかかるたびに歯根の方向にクサビのような力が働いてしまうため、歯根が真っ二つに割れてしまうということが起こりやすくなります。

 

1-2噛み合わせの力が強すぎる

噛む力には人それぞれ個人差がありますが、噛む力の強い人は歯が割れるリスクが高くなります。一般的に、ガッチリとした男の人は咬合力が強く、特に一番奥の歯など、噛む力が強くかかる場所が割れやすい傾向があります。

 

また、噛み合わせが悪くて、特定の歯に力が集中するような場合にも、力が過剰となり、歯が割れやすくなります。

 

1-3歯ぎしり・食いしばり

眠っている間に歯ぎしりをする人や、スポーツや力仕事などで食いしばることの多い人、ストレスなどにより食いしばる癖のある人は、歯が割れるリスクが高くなります。

歯ぎしり、食いしばりによる歯へのダメージはとても大きく、体重以上の力がかかると言われています。

特に、就寝中の歯ぎしりは、異常な力が持続的にかかり続けますので、それが毎日続くと、かなり歯根破折のリスクが高くなると言えます。

 

1-4硬いものを好んでよく食べている

氷や飴をガリガリ噛む、梅干しの種やカニの殻などを歯で割る、スルメをよく食べるなど、硬いものを好んで噛む、といった行為も、歯にとってかなりの衝撃となりますので、割れてしまうリスクがあります。

 

2.歯が割れる「歯根破折」の予防法

2.歯が割れる「歯根破折」の予防法

上で挙げた歯根破折を起こす要因を抱えていて歯が割れるリスクのある人でも、次のような対策をすることにより、歯根が割れるのを予防することが可能です。

 

2-1歯ぎしり・食いしばり対策をする

◆意識してやめてみる
癖でふとした時につい食いしばってしまう、という人は、意識してやめるようにしていきましょう。なお、力を入れずに上下の歯をクッと噛む、もしくはカチカチと合わせたりする行為も、歯にとってはダメージとなることがありますし、就寝中の歯ぎしりを引き起こしやすくするとも言われていますので、意識してやらないようにしましょう。

◆スポーツでやむを得ない場合には、スポーツ用マウスピース
スポーツをしていて奥歯で食いしばる必要がある、という場合には、スポーツ用のマウスピースを入れて、歯にダメージが加わらないようにするのがおすすめです。

◆就寝中の歯ぎしりには、ナイトガードがおすすめ
就寝中の歯ぎしりは、自分でコントロールするのは難しいですが、日中の歯を合わせる癖をやめることで改善する場合もありますし、寝る前に「食いしばらない」と自己暗示をするのも効果的だと言われています。

それでも改善しない場合には、夜間に装着する「ナイトガード」という、歯ぎしりから歯を守るマウスピース(歯科の保険適用)をつけると良いでしょう。

 

2-2むし歯予防に力を入れる

歯は、神経がある状態では滅多に割れることはありません。それは神経と一緒に血管が存在し、歯に栄養が送られて適度な弾力が保たれているためです。

ところが、神経を抜いてしまうと歯に栄養がいかなくなるので、強い力によって割れやすくなります。

根本的に割れにくい歯を維持するためには、むし歯によって神経を失う、ということにならないよう、むし歯予防に力を入れることが大事です。

そのためには、毎日の丁寧な歯磨きに加え、歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせません

 

2-3硬いものをなるべく避ける

よく噛むことは大事ですが、硬いものを頻繁に噛みすぎると歯にとって大きなダメージとなり、そのダメージが蓄積すると、歯が割れてしまう原因になります。

そのため、歯に強い衝撃が加わるような硬いものはなるべく避けるようにしましょう。

 

2-4.噛み合わせの治療をする

噛み合わせが悪くて、特定の歯に力が集中している場合には、放置しておくといずれ歯が割れてしまうリスクが高いため、被せ物などで調整するか、矯正治療で根本的に噛み合わせを整える治療をするのがおすすめです。

 

3.歯が割れた(歯根破折)場合の治療法

3.歯が割れた(歯根破折)場合の治療法

歯根破折が起こった場合、次のような治療法が行われます。

 

3-1抜歯

歯根破折してしまった場合、抜歯となる場合がほとんどです。特に、縦に垂直的に真っ二つに割れている場合には、ほとんどのケースで抜歯しか方法がない、という状態になっています。

歯根破折をすると、周囲より細菌感染が起こってしまい、たとえ残す方向で治療を行っても、常に感染した状態が続き、周囲の骨がどんどんと溶けてなくなってしまいます。そうすると、その後にインプラント、となった場合に条件が悪くなってしまいます。

 

3-2破折した部分を接着する

破折した部分に細菌感染がそれほどないと判断される場合、破折した部分に接着剤を流し、固定を試みる場合もあります。ただし、あまり予後が良くない場合がほとんどです。

 

3-3矯正力で引っ張り上げる

歯根破折が水平的に起こっている場合で、破折線が歯茎に近い部分にある場合、歯根を矯正力で引っ張り上げ、破折した部分を露出させ、歯茎の中で感染が起こらないようにして、被せ物をする場合もあります。

 

3-4歯周外科で対処する方法

破折している部分が深い場合には、一度抜いて取り出し、接着剤で固定したのちに元あった場所に戻す「再植術」を試みる場合もあります。ですが、こちらもあまり、一般的には予後がいいとは言えません。

もしくは、破折が水平的に起こっていて、歯茎に近い部分にある場合には、骨を削って破折線を露出させ、歯茎に感染が起こらない状態にして被せ物をすることもあります。

 

4.まとめ

 

歯が割れる場合、歯の頭の部分である「歯冠」が割れる分には、詰め物や被せ物で治療をすることで保存的な治療が可能ですが、歯根まで割れてしまう歯根破折の場合、歯が残せる可能性が途端に低くなります。

また、歯根破折は、むし歯や歯周病と異なり、初期に見つけるということはほぼ不可能で、ある日突然割れたという形で症状が現れるのが通常です。

そのため、神経を抜いた歯がある人、差し歯が入っている人、噛み合わせの力が強い人、歯並びが悪くて特定の歯に力がかかっている人、歯ぎしり・食いしばりのある人、硬いものをよく噛む人は、歯根破折のリスクが高いことを自覚し、今回ご紹介した予防対策をとってみられることをおすすめします。

また、歯の神経を失うと、極端に歯は弱くなってしまうため、日頃から毎日の歯磨きの徹底、そして歯科医院での定期的なクリーニングを受けて、むし歯予防対策をしっかりと行っておくことが大事です。

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この記事の監修者

医療法人幸美会 なかむら歯科クリニック 理事長・院長 歯科医師 中村 幸生

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