訪問歯科診療の料金・費用は保険適用されるの?対象者は?
歯の治療を受けたくても体が不自由で歯医者に通えない、要介護のご家族の方に歯科治療を受けさせたいけど連れていけない、そんなお悩みをお持ちの方には、訪問歯科診療を利用するという選択肢があります。
そこで今回は、料金や保険適用の有無、利用できる条件、診療内容などについてご紹介します。興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
1.訪問歯科診療の受診対象者は?
1-1訪問歯科診療とは?往診との違い
訪問歯科診療とは、歯医者へ通うのが難しい状況にある人のために、歯科医師や衛生士が患者さんの居住する場所(自宅・施設等)を訪れ、歯の治療や口腔ケアを行う制度のことをいいます。
一方、よく混同されがちな「往診」というのは、急なお口のトラブルに対し、応急処置を行うものを言います。訪問歯科診療は、そのようなその場限りの処置を目的とはしておらず、継続的な歯科治療が必要な人に対し、歯科医院で行うのと同等の治療を行うことで、生活の質の向上、全身の健康状態改善といったことを目指します。
1-2訪問歯科診療を利用できる条件
訪問歯科診療を受けられるのは、基本的には次のような方となります。条件に当てはまる方であれば、年齢に制限はありません。
- 病気やケガなどにより身体が不自由で、お一人で通院できない方
- 要介護状態の方
- 寝たきりの方
- 認知症・精神的な疾患により、ご自身で状況判断することが難しい方
なお、他の医療機関に通院している場合には、通院困難とは認められず、対象とはなりません。また、診療を受けられる場所は、患者さんとなる人が居住する場所、つまりご自宅や老人ホームなどの施設となりますが、デイケア、デイサービスの場合は寝泊まりする場所ではないので対象とはなりません。
個々のケースにおいて対象となるかどうの最終判断は、歯科医師が適正に判断を行いますので、ご自身、もしくはご家族の方が対象になるかどうか知りたい場合には、直接歯科医院に問い合わせをされることをおすすめします。
1-3訪問歯科診療を受けられるエリア
訪問歯科診療を保険で受けるためには、歯科医院より半径16km圏内であることが基本的な条件となります。もし、患者さん側の希望により、それを超える距離となってしまう場合には、保険が適用となりませんので注意が必要です。
ただし、例外もあります。たとえば、
- 自宅、もしくは入居している施設付近に訪問診療を行う歯科医院がない
- 最寄りの訪問診療を行う歯科医院はあるものの、タイミングが合わず依頼が不可能
といったような場合においては、半径16km圏内でなくとも保険が適用されることもあります。保険が適用になるかどうかは、個々のケースによっても異なりますので、訪問診療を受けたい歯科医院に、直接問い合わせをしてみましょう。
2.訪問歯科診療の診療内容
訪問歯科診療では、次のような治療を受けることができます。
- 検診
- 虫歯治療
- 歯周病治療、歯石除去
- お口のクリーニング
- 入れ歯の調整
- 入れ歯作製・修理
- 入れ歯清掃
- 抜歯
- 口腔衛生指導
- お口の機能訓練
- 食事指導
3.訪問歯科診療の料金の内訳
気になる訪問歯科診療にかかる料金について見ていきましょう。まず、外来で治療を行う場合も、訪問診療で治療を行う場合も、処置ごとの保険点数というのは同じですので、それに対して支払う額というのは変わりません。
ですが、訪問診療を受ける場合には、歯科訪問診療料、そして、介護認定を受けている方は、居宅療養管理指導料というものが別途かかってきます。
3-1歯科訪問診療料
歯科訪問診療料は、訪問診療を受ける場合にかかってくるもので、これには状況に応じて、3段階の保険点数が設定されています。
具体的には、「1回の訪問診療につき、同じ建物で何人の人の診療を行ったか?」により、保険点数が違ってきます。
基本的には、「1人のみ」「2〜9人」「10人以上」の3区分に分けられており、たとえば、自宅で1人のみ診察を受ける場合よりも、施設で多人数が診察を受ける場合の方が一人当たりの支払額は少なくなります。また、診療時間が20分を越えるか越えないかでも変わってきます。
保険 | 算定項目 | 人数区分 | 人数区分 |
---|---|---|---|
医療保険 | 歯科訪問診療料 | 同一建物居住者 | 1日あたり |
訪問歯科衛生指導料 | 単一建物診療患者 | 1月あたり 月初に区分点数を確定し、日々算定 |
|
介護保険 | (介護予防)居宅療養管理指導 | 単一建物居住者 |
※1点=10円(1割負担の場合:1点=10円、3割負担の場合1点=30円)
ですが、ご自宅にて夫婦で診察を受けた場合などにおいては例外となることもありますので、事前に歯科医院に確認しておくことをおすすめします。
3-2居宅療養管理指導料
介護認定を受けている方に関しては、居宅療養管理指導料というものが発生してきます。
これは、歯科医師や歯科衛生士が定期的に患者さんの元を訪問して、患者さんやご家族の方、ケアマネージャーの方に対して、介護する上でのお口に関する指導や助言を行ったことに対して発生する料金です。
歯科医師が行う場合と歯科衛生士が行う場合とでは、保険点数、月に算定可能な回数が異なりこちらの指導料に関しても、歯科訪問診療料と同様、保険点数は3区分に分けられます。(歯科医師:最大516点、月2回まで、歯科衛生士:最大361点、月4回まで)
3-3実際にかかってくる料金
実際に訪問歯科診療を受けた場合にかかる料金は、上記で紹介したものに加え、治療費(検査や処置にかかる費用)ということになります。
つまり、基本的には、
歯科訪問診療料+治療費+居宅療養管理指導料(介護認定を受けている方)
という形になります。
実際にかかる料金の目安としては、自己負担が1割の場合だと、1回当たり2500〜3000円程度ですが、お口の状況、治療内容などによっても前後しますし、制度自体も複雑で、個々のケースによっても異なりますので、あくまでも参考としてお考えください。
より詳細な料金を知りたい、という方は、訪問料金シミュレーターを使って料金算出をしてみると、大まかな金額を知ることができます。
訪問料金シミュレーター
提供元:一般社団法人日本訪問歯科協会/訪問歯科ネット
料金シミュレーターで提示される金額は、あくまでもおおよその目安となり、個々の状況により実際にかかる料金は異なることをご了承ください。
3-4交通費、出張費はかかるの?
交通費や出張費に関しては、別途医療機関から患者さんへ請求することは認められていますが、これに対する対応は歯科医院によっても異なります。当院では交通費、出張費をいただくことは一切ありませんのでご安心ください。
4.原則として、健康保険が適用されます
訪問歯科診療では、医療保険と介護保険が適用されます。そのため、患者さんの負担額は、通常の保険治療と同様、1割〜3割となります。
障がい者認定の方、生活保護を受給している方の場合は、各市町村の定める減免と同じ扱いを受けられます。
原則として、訪問歯科診療は、全ての治療が健康保険適用内で行われますが、もし、患者さん側より保険適用外の入れ歯やセラミックを入れたいといった要望がある場合には、その旨を伝えておくようにしましょう。
治療内容によっては自費の入れ歯、セラミックなどの作製が可能になることがあります。(お口の状況などによっては不可能な場合もあります)
5.まとめ
体が不自由で移動が難しいと歯科治療をあきらめてしまう方もいるかもしれません。ですが、お口の健康状態というのは、生活の質に直接的に関わるだけでなく、特に高齢者の方の場合、細菌性肺炎を起こす原因にもなるなど、体の健康状態をも左右します。お口のトラブルでお悩みの方も、お口の健康を維持していきたい、という方も、ぜひ訪問歯科診療制度を利用してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
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