シーラントは子供のむし歯予防に効果があるの?
今回は、むし歯リスクの高い年齢のお子さんの奥歯を、むし歯から予防する効果の高い「シーラント」についてご紹介します。
1.シーラントがおすすめの理由は?
1-1シーラントとは
シーラントとは、汚れが溜まりやすくてむし歯リスクの高い奥歯の溝を、あらかじめプラスチックの材料で塞ぐ処置によって汚れがたまらないようにし、むし歯を予防するという方法です。シーラントの材料の中には、むし歯予防効果、再石灰化を促進する作用のあるフッ素が含まれているので、さらに高いむし歯予防効果が期待できます。シーラントは、多くの場合、保険治療で行うことが可能です。
1-2シーラントのむし歯予防効果
シーラントのむし歯予防効果に関しては、多くの調査がなされており、その有効性が証明されています。具体的には、4年以上で約60%のむし歯予防効果が認められていることがわかっており、フッ素塗布などを併行して行っていくことにより、更なるむし歯予防効果が期待できます。
1-3子どもにシーラントが勧められる理由
お子さんのむし歯予防として、フッ素塗布がよく行われますが、特にむし歯リスクが高い6歳臼歯の溝に関しては、様々な理由により、それだけでむし歯を完全に防ぐのは不可能です。そのため、6歳臼歯に関しては、多くの歯科医師がシーラントを推奨しています。6歳臼歯におけるむし歯リスクの高さの理由として、次のようなことが挙げられます。
◆質が未完成
生えたばかりの歯というのは、形はしっかりしているように見えても、中の構造的にはまだ未熟で、虫歯菌が産生する酸に触れると溶けてしまいやすいという弱点を持っています。そのため、質がしっかりしてくるまでの数年間はしっかり守っておくと安心です。
◆自分で磨くのが困難
小学生くらいになると、一人で歯磨きをするというお子さんが増えてきます。ですが、小学校低学年くらいのお子さんはまだ隅々まで歯磨きをすることが難しく、ことさら奥の歯になると磨き残しが出るリスクが高くなります。そのため、歯磨きが一人で上手にできるまでの数年間は、シーラントで保護してあげることでむし歯リスクを下げておくと安心です。
◆溝が深く汚れが溜まりやすい
生えたての歯は、まだすり減っていないため、相対的に歯の溝が深くなってしまいますので、歯ブラシの毛先が届きにくくなり、磨いていても溝の奥まで毛先が届いていない、ということもあります。
2.シーラントのメリットとデメリットは?
2-1シーラントのメリット
◆溝に汚れが溜まりにくくなる
深い溝であっても、シーラントがしっかりと溝を塞ぎますので、汚れが物理的にその部分に溜まることがなくなることにより、むし歯リスクを効果的に下げることができます。
◆歯を削らない
まだむし歯になっていない健康な歯に行う処置なので、当然ながら歯を削る必要はなく、お子さんが痛みを感じることはありません。
◆フッ素によるむし歯予防効果
シーラントに含まれているフッ素成分が、むし歯予防効果を発揮してくれます。
◆保険適用が可能なことも多い
シーラントは保険適用になるケースが多くあります。
2-2シーラントのデメリット
◆外れることがある
シーラントは、削って詰めているわけではありませんので、欠けたり、外れたりしてしまうことがあります。そのような場合には、再度やり直すことが必要になります。外れたかどうかというのは、自分ではわかりづらいため、定期的に歯科でチェックを受けていく必要があります。
◆しっかり行わないと逆効果
シーラントを行うためには、歯の表面を丁寧に清掃して、汚れを完全に落とした状態で行い、きちんとした手順を踏んで行う必要があります。汚れが残ったまま詰めてしまうと、虫歯が内部でできてしまう、ということにもなりかねません。そのため、治療を受ける歯科医院選びは慎重に行う必要があります。
◆完全にむし歯が防げるわけではない
シーラントにはむし歯予防効果を高める効果はありますが、それをやっているからといって絶対的にむし歯を防ぐものではありません。当然ながら歯磨きはしっかりと行う必要があります。
◆唾液の多いお子さんではやりにくい
お子さんは唾液の分泌が盛んなので、下の奥歯の場合、すぐに唾液が溜まってしまい、シーラントをやるのが困難になることがあります。
3.シーラントは何歳からやるのがいい?
3-1 6歳臼歯は6〜7歳くらいのタイミングで
シーラントが最も推奨されるのは、6歳臼歯に対してです。6歳臼歯というのは一生使う永久歯であり、奥歯の中でも特に重要な役割を果たす歯だからです。
そのため、6歳臼歯に対しては、大体6歳〜7歳の時期からということになります。
ですが、歯が生えるタイミングというのは、個人差がありますので、定期的に歯科で検診を受ける際に、適切なタイミングを歯科医師よりアドバイスしてもらうようにしましょう。もちろん、他の永久歯に関しても、6歳臼歯以降にご希望であればシーラントを行うことは可能です。
3-2 乳歯に行う場合には早くて3歳くらいから
乳歯の奥歯が生え切るのは2歳半を過ぎたあたりからです。ですが、このくらいの年齢というのは、まだお口の中に器具を入れて行う処置というのは難しいため、お子さんの状況を見ながら、可能であれば3歳くらいから行うこともあります。ですが、多くの場合はもう少し大きくなった4〜5歳くらいで行います。
3-3 嫌がる場合は無理に行う必要はありません
シーラントは、むし歯治療とは違い、絶対に行わないといけない処置、というわけではありません。また、これをやらなかったからといってむし歯になるというわけでもありません。大事なのはあくまでも、毎日のプラークコントロール(糖分を摂りすぎない、歯磨きをしっかりと行う)です。
シーラントは痛みを伴う処置ではありませんが、お子さんによっては器具が入ること自体を嫌がることもありますので、そのような場合には、無理矢理行って歯医者嫌いになってしまうのを避けるためにも、控えた方が良いでしょう。
3-4 「初期むし歯」に対しては保険適用されます
シーラントは予防歯科ですが、「初期むし歯」と診断される場合には保険適用が可能になります。ただし、初期むし歯かどうかの判断基準は歯科医院によっても異なりますので、あらかじめ検診をしてもらった段階で、お子さんのケースにおいてシーラント保険適用が可能かどうか、歯科医に確認しておくことをおすすめします。
4.まとめ
6歳臼歯は、歯の中でも最も大きい歯で、ものを噛む上でも、噛み合わせの上でも、一生にわたって大事な役目を果たす歯です。それにもかかわらず、6歳という低年齢で生えてくるため、多くのお子さんが早期にむし歯ができてしまっているのが現状です。
歯というのは、生えてから年数が経つと、初期の頃よりもむし歯への抵抗性が高くなりますので、生え始めの歯質が弱い時期には、シーラントでより予防効果を高めておくと安心です。最初の時期にしっかりと保護してあげると、その後はむし歯リスクがグンと下がってくるからです。
歯を長持ちさせるためには、「悪くなってから治す」のではなく、「悪くならないようにする」ことが大事です。お口を健康に保つことで、体も健康に保ちやすくなります。ぜひ、お子さんの健康のためにも、シーラントを検討されることをおすすめします。
この記事の監修者
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