子どもが顎関節症になったらどうすればいいの?
1.顎関節症の場合に子どもが訴える症状は?
お子さんが顎関節症になっているかどうかを判断するために、まずは顎関節症とはどのようなものか、どんな症状が現れるかを見ていきましょう。
1-1.顎関節症とは
顎関節症というのは、顎の関節とその周囲にある筋肉(咀嚼筋)が引き起こす症状のことを言います。具体的には、「顎関節から音がする」「顎が痛い」「口が開けづらい」といった3つの症状があれば、顎関節症と診断されます。
顎関節症は珍しいものではなく、日本においては2人に1人が人生のうちで一度は経験すると言われており、若い女性、中年の女性の方に多く見られる傾向があります。(女性は男性の2〜4倍)
子どもにおいては、小学生まではそれほど多くありませんが、中学生以降になると年齢が上がるにつれて増えていきます。こちらも特に女子に起こりやすい傾向があります。ちなみに、子どもにおける顎関節症の発症率は10%程度だと言われており、頬杖などの生活習慣も発症に大きく関わっていると考えられています。
1-2.子どもの顎関節症で現れる症状
お子さんが次に挙げるような症状を訴える場合、顎関節症の可能性があります。
◆口の開閉時の雑音
一番多いのが、口の開け閉め時に起きる雑音です。「カクッ」といった高い音や「ゴリッ」といった鈍い音がします。これは、関節の内部にある関節円板がずれることによって起こります。
◆あごの痛み
口の開け閉め時や物を噛む時に痛みを感じることがあります。また、何もしなくても、あご全体に重苦しい鈍痛を感じることがあります。
◆口が大きく開きづらい
顎関節症が進行していくと、口が開きづらくなってくることがあります。これは、関節内の関節円板がずれてひっかかってしまうことによって起こります。
◆奥歯の痛み
実際に奥歯に問題がなくても、咀嚼筋が凝ってしまうことで重苦しい痛みを生じ、あたかも奥歯が痛いように感じてしまうこともあります。
◆他の症状
顎に関係していないような場所にも症状を起こすことがあります。例えば、頭痛や肩こり、首の痛み、耳鳴り、めまいといった症状が挙げられます。
2.子どもの顎関節症の原因・予防法
子どもの顎関節症は、生活習慣が大きく関係しています。顎関節症の原因を知ることで、予防につなげていくことが可能ですので、参考にしてみてください。
2-1.子どもの顎関節症の原因は?
◆歯並びや噛み合わせの変化によるもの
子どものうちは、乳歯から永久歯への生え変わりが起こり、あごの骨の成長も盛んです。それに伴い、歯並びや噛み合わせなども刻々と変化していきますので、顎関節に影響が起きる可能性があります。
◆顎関節への過剰な負荷
夜間の歯ぎしり、日中に上下の歯を食いしばる癖(集中している時に起こりやすい)、頬杖、爪を噛む癖、うつ伏せ寝、片方だけで噛む癖といった習慣がある場合、顎関節への過剰な負担がかかりやすくなります。管楽器を吹くお子さんも顎に負荷がかかる傾向があります。
◆スマホ猫背などの姿勢
最近で多いものとして、スマホ猫背のような姿勢の悪化が挙げられます。スマホを見る際に、頭が前傾した状態になると、通常触れ合うことのない上下の歯が接触することで、顎関節に負担がかかってしまいます。
◆ストレス
顎関節症は、精神的ストレスが主要な原因と考えられています。ストレスにより、就寝時の歯ぎしりや、日中の食いしばりが増えてしまうため、顎関節への過剰な負担がかかってしまいます。
2-2.子どもの顎関節症の予防法
◆日頃行っている癖に注意しましょう
誰にでも癖はありますが、口や顔面に力がかかる癖というのは、それが顎関節症を引き起こす原因になりかねません。もし、頬杖やうつ伏せ寝、爪を噛む、食いしばる、というような顎に負担のかかるような癖がある場合には、お子さんにもその弊害を伝えて、やめさせていくようにしましょう。
◆姿勢を正しましょう
姿勢は下顎のポジションに関わってきます。特に首を前傾させる姿勢は顎にとって良くないので、意識してやめさせるようにしましょう。
◆食べる時には左右均等に噛むようにしましょう
片方で噛むと、左右の筋肉のバランスが悪くなってしまい、顎関節症の原因になります。片方で噛むのが癖になっている場合には、意識して両方で噛むように伝えましょう。そして、もし、虫歯などが原因で片方が噛めないようであれば、早めに治療をして左右で噛めるようにしましょう。
◆ストレスを溜め込まないよう、注意してあげましょう
現代のお子さんは、勉強や習い事に忙しく、何かとストレスを抱えていることが多いものです。ストレスは体の健康にとっても大きな影響を及ぼしますので、お子さんがあまりストレスを抱えすぎないように、親御さんが配慮してあげることはとても大事です。
3.子どもの顎関節症の治療法
3-1.子どもの顎関節症で行われる治療法
お子さんの顎関節症は、上で挙げたような生活習慣に気をつけることで改善し、治癒することも多くあります。そのため、日常的には頬杖などの癖を取り除く、左右均等に噛む、姿勢に気をつける、といったことを実践していただくことが大事です。
もし歯ぎしりがひどいというような場合には、顎関節を守るために、就寝中にマウスピース装着していただくという方法が一般的です。それに加え、痛みが辛い場合には、痛み止めの薬が処方されることもあります。
歯並びや噛み合わせに問題がある場合には、矯正治療をすることによって顎関節症が改善していくこともあります。
ちなみに、顎関節の雑音の場合には、特に治療をしなくても自然軽快するケースが多いことがわかっており、日常生活を送る上での注意事項を守っていただきながら、経過観察をしていくことが多いです。
3-2.子どもの顎関節症の時にやってはいけないこと
顎関節症の症状を少しでも早く和らげるためには、顎の関節に負担をかけないことが大事です。そのためには次のことに注意しましょう。
◆硬いものを食べない
顎関節症が起きている時には、顎関節に負担をかける硬いものはなるべく食べないようにしましょう。
◆口を大きく開けてあくびをしない
大きく口を開けることは顎関節に負担をかけてしまいますので、あくびなどの際、口を大きく開けすぎることは控えましょう。
◆顎関節を押さない
顎関節が痛いからといってマッサージのつもりで顎関節を強く押してしまうと、余計に症状を悪化させてしまう原因になりますので、気をつけましょう。
3-3.子どもの顎関節症は何科で診てもらう?
お子さんが顎関節症かも?と思ったらまずは歯科を受診しましょう。稀なケースで専門的な治療が必要になる場合には、大きな病院にある口腔外科に紹介されることもありますが、通常は、歯科での対処となります。
4.まとめ
お子さんの顎関節症は、原因を見つけ、それに合った対処をすることで、特別な治療をしなくても治っていくことも多いものです。
そのため、もし顎関節症が疑われるようであれば、一度早めに歯科を受診し、まずは歯科医師に状況を確認してもらいましょう。その上で適切なアドバイスを受けて実践し、必要であれば治療を受けることで、症状を改善することができます。
顎関節症は、大人になってからではなかなか治りにくいというケースが多くなってきますが、お子さんのうちに対処しておくことで根本的な解決がしやすくなりますので、なるべく放置しないようにしましょう。
この記事の監修者
こちらの記事もおすすめ!