歯周病の予防と早産の関係とは?妊婦さんの歯周病の予防方法について
実際、歯周病で歯を失う人は、高齢になると増えてくるため、そのようなイメージは無理もありませんが、歯周病を実際に発症するのは、30〜40代くらい、早い人では20代で発症します。
特に女性の場合、妊娠時に歯周病を発症する人も少なくなく、歯茎から出血しやすい、口臭が強くなった、という人が多く見られます。中には、この時期に歯がボロボロになってしまったり、歯を失ってしまったりする人もいます。また、妊娠時の歯周病というのは、お腹の赤ちゃんにまで影響を与えてしまうことがあるため、そういった点でもかなりの注意が必要になってきます。
1.妊婦さんは歯周病リスクが高い!
実は、歯周病というのは、女性の方が男性に比べてリスクが高いことがわかっています。その理由として、女性ホルモンが歯周病の発症に関わっているということが挙げられます。特に、妊娠期になると、女性ホルモンが激増するため、それに伴って歯周病リスクも大きく跳ね上がります。
妊娠期において歯周病リスクが高くなる原因として、次のようなことが挙げられます。
1-1女性ホルモンの激増
妊娠期には、女性ホルモンが急増します。歯周病を引き起こす細菌には複数ありますが、その中で女性ホルモンをエサとして増殖するものがあり、その影響によって歯周病を起こしやすくなります。
1-2 唾液の性状が変わる
妊娠中には、ホルモンの変化により、唾液の性状が変化して、粘稠性の高い唾液になります。その結果、お口の中を洗い流す自浄作用が低下し、歯周病菌を含む様々な細菌が繁殖しやすい環境になります。
1-3 つわりによるお口の状態悪化
つわりによる気分不良で歯磨きがおろそかになる、また、食事の回数が増えたり、食生活が乱れたりすることが多く、プラークが溜まりやすい環境になりがちで、その結果お口のトラブルが起こりやすくなります。
1-4免疫力の低下
妊娠中は、お腹の赤ちゃんを異物と見なさないよう、免疫力が下がると言われています。免疫力が下がると、いろいろな感染症にかかりやすくなりますので、歯周病にもかかりやすくなります。
2.妊婦さんが歯周病になると、出産や赤ちゃんに対してどんな影響が出る?
2-1歯周病菌は血管に入って様々な病気を発症・悪化させるリスクファクター
歯周病菌、そして歯周病菌が産生する炎症物質は、血管に入りこんで全身に回り、他の臓器にも影響を及ぼします。その結果、心臓疾患、脳梗塞、糖尿病、胃潰瘍、胃がん、関節リウマチなど、多数の病気を発症・悪化させてしまいます。
2-2 歯周病菌は胎盤やヘソの緒に達して赤ちゃんにも影響を
妊娠中に歯周病になると、お腹の赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があり、危険な状態を引き起こすこともあるため、注意が必要です。
◆早産(妊娠37週日未満の出産)
歯周病により歯茎が炎症を起こすと、炎症性物質が放出されます。これが血管の中に入り込み、子宮に達すると、分娩が促進されて早産を引き起こすことがあります。調査データによると、妊娠中に歯周病を患っている人は、健康な人に比べて、早産のリスクが7倍にも高まるとされています。
◆低体重児出産(出生時の体重が2500g未満)
歯周病菌が血管に入り込んで、胎盤に感染を起こす場合、胎児の正常な発育を妨げてしまう可能性があり、赤ちゃんが低体重児になって生まれてしまうことがあります。
3.妊娠時の歯周病治療の注意点は?
妊娠中にはお腹の赤ちゃんのためにも、ストレスを避けるために歯科治療はやめた方がいい、と思われていることがありますが、母体の状態や妊娠の時期に応じて、ある程度の治療は可能です。
むしろ、妊娠中には、普段よりもお口の環境が悪化しやすいため、予防のために、また、悪いところがトラブルを起こさないよう、積極的に歯科に通って、できる限りの治療を受けておくことが大事です。
もちろん、ママとお腹の赤ちゃんの健康を第一に考える必要がありますので、妊娠期に安全に歯科治療を受ける際の注意点をご紹介します。
3-1妊娠している、もしくは可能性がある場合は必ず伝える
安全に治療を受けるためにも、妊娠している人、またはその可能性がある人は必ず問診時、もしくは、わかった段階で担当医に伝えるようにしましょう。
3-2妊娠期に合わせた治療を受ける
歯科治療にも麻酔を使う治療や外科的な治療など、いろいろな治療があります。歯石取りや軽い虫歯の治療などの軽めの治療は、妊娠初期にも可能となる場合が多いですが、麻酔を使う治療などは通常、安定期(16週〜27週)に行います。妊娠初期や妊娠後期には、麻酔を使う治療や、時間が長くかかる治療は避け、気になる場合には基本的には応急処置で様子を見ます。
3-3無理をせず、きつい時は伝える
体がきつい時には治療は避けましょう。また、つわりのある人は、口に器具が入ると気持ち悪いと感じやすくなることがありますし、妊娠時期によってはトイレが近くなったり、ずっと横になっているのが辛くなることもあります。そのような場合にも無理をせず、担当医に伝えるようにしましょう。
3-4妊娠中の麻酔・レントゲン・投薬について
◆麻酔
通常、歯科治療で行う麻酔は、歯茎に打って局所に効かせる「局所麻酔」ですので、体へ影響を及ぼすことはほぼないと言われています。ですが、念のために、緊急の事態などを除き、麻酔を使う処置は基本的には安定期になってから行うことが多いです。
◆レントゲン
レントゲンは、放射線の影響が気になる人もいることでしょう。ですが、レントゲンを撮る際には放射線を遮断する防護エプロンをつけて腹部はしっかりと守られますので、放射線の影響はほとんどないと言われています。また、近年では、レントゲンのデジタル化が進んでいるため放射線量もかつてのものと比べてかなり低く抑えられています。
◆投薬
妊娠中というのは、薬に関しては特に慎重になる必要があります。そのため、基本的には、妊婦さんへの投薬は安易には行いません。歯の痛みが強い場合には、安全性が高いと言われている薬を最低限の用量で出すことはあります。
抜歯や外科処置といった治療は、麻酔が切れた後に強い痛みや腫れを出す可能性が高く、投薬が必要になることから、そういった意味でも、基本的には妊娠している方では行いません。
4.自分でできる妊娠中の歯周病対策
妊娠中には、歯周病のリスクが一気に上がるため、それまでよりも入念なお口のケアが必要になってきます。その一環として、歯科医院に通うことは大事ですが、ご自分でできる対策として、次のような方法をおすすめします。
- 食べた後は、こまめに歯磨きをする。頻繁に歯磨きができない時は、なるべくすぐに口をゆすぐ。
- 歯ブラシを入れると気持ちが悪くなる人は、できるだけ小さめヘッドの歯ブラシを使う。
- 歯茎が炎症を起こしやすいため、柔らかめの歯ブラシで歯茎をマッサージするように磨く。
- 気持ちの悪くならない歯磨き粉を使用する、もしくは歯磨き粉は使わず磨く。
- 歯ブラシは後ろから前にかきだすように動かす。
- 就寝中には細菌が繁殖しやすいので、寝る前には必ず磨く。
- 糖分、糖質はプラークを溜めやすいので、なるべく控える。
5.まとめ
妊娠中の歯周病を放置することは、歯を失う原因になるだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの健康にとってもよくありません。女性の方は、そういった意味でも、妊娠中はお口の健康に特に注意を払うようにしましょう。もちろん、妊娠してから慌てないためにも、常日頃からご自分の口の中に関心を持ち、普段から口腔ケアをしっかりと行い、歯科医院に定期的に通っておくことをおすすめします。
この記事の監修者
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